ディレクト・データ

ダイエットの経済的価値を試算してみた

先日、とある研究結果を見つけました。

愛知の健康保険協会による

 BMI が医療費に与える影響について(※1)

というレポートです。

 このレポートでは標準的なBMI値から逸脱するほど、年間平均医療費が増えるという結果になっていました。肥満になるほど不健康で病気になる確率は高いイメージではあるので、直感的にも理解しやすい結果です。

 このレポートを見た時にふと、「BMI値と医療費を法則化できるなら、将来かかる医療費への影響値としてダイエットの効果を計算できるのでは?という考え、ザックリ試算してみました。

①分析課題

 将来かかる医療費への影響値としてダイエットの経済的効果を法則化すること

②前提

・BMIと医療費の関係性は前述の※1を参考に用いるとする。
(しかし、元データ及びモデル式は不明なため、レポート内グラフの縦軸・横軸値の値を参考にそれっぽいモデルを作成。今回試算に使った式は以下の通り。また参考では男性・女性間でもモデルが若干異なるものの、目分量になるので区別はせずに考えております。)
 年間医療費 = 631.313×BMI^2 – 24,873.737×BMI+ 331,439.394

・レポートには明確な記載はなかったが、研究当時の同年代国民1人あたり医療費の額と比較すると約3割程度だったため、自費負担額で計算されていると想定。

・医療費相場については、分析時最新の2019年データに基づいて計算するものとする。(将来的の医療費相場の変動は加味しない)

・モデルのサンプル条件が35 歳~74 歳であったため、試算対象とする医療費は「35歳~74歳までの医療費」とし、35歳~74歳までの医療費を生涯医療費とする。

プロセス1.直近の医療費相場の反映

 データが平成20年の研究データで10年以上前のデータであったため、現在とは相場が大きく異なっていると考えられる。そこで、政府の統計情報サイト(e-start)で現在と当時でどの程度医療費相場が変化しているかを検証。

 直近のデータは2019年の国民医療費(第8表 国民医療費・構成割合・人口一人当たり国民医療費,診療種類・性・年齢階級別)より、当時のデータとしては2008年の国民医療費(第12表 性、年齢階級、診療種類別国民医療費及び人口一人当たり国民医療費)を使用※2

 人口一 人当たり国民医療費(千円)の35歳~74歳までの医療費を比較

 
   ※2より著者作成

 これより医療費は35歳~74歳までにかかる医療費は112%上昇しているといえる。
 そのため、本分析では以下の式を35歳~74歳までの医療費を生涯医療費として用いるとする。

 生涯医療費 = (631.313×BMI^2 – 24,873.737×BMI+ 331,439.394)× 112% × 40 (※3)

プロセス2.  消費カロリーをBMI値に換算

 次に運動して消費したカロリーとBMI値の法則化を行う。

 カロリーに関してはタニタの「カロリーとは」より、以下の記述を参考にしました。

 ”体内に貯蔵されている脂肪1kg(1,000g)を消費するにはどれだけのカロリーが必要になるのでしょうか?
脂肪1gは9kcalなので、1kgの脂肪を消費するには9000kcalのカロリーが必要かといえばそうではありません。人間の脂肪は「脂肪細胞」として蓄えられているので、全てが純粋な脂肪というわけではありません。脂肪細胞の約8割は脂質(あぶらの塊)ですが、残り2割ほどは水分や細胞を形成するさまざまな物質で構成されています。
これを踏まえて計算すると脂肪1kgを消費するのに必要なエネルギー(カロリー)は、9kcal×1000g×80%=約7200kcal 程になります。”

 もちろん、ダイエットで消費したカロリーが全て脂肪を消費するとは限りませんが、一旦全て脂肪で消費したと仮定すると、7200kcal消費すると1kgのダイエット効果となります。(実は筆者は昔レコーディングダイエットをしたことがあったのですが、その際に消費カロリーと体重変化をこの水準で計算すると概ね一致していたので結構信頼しています)

 またBMI値は以下の通りです。
   BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m)^2
 つまり先ほどのカロリー計算に直すと
   BMIの変化 =     カロリー変化(kcal) / [7200 × 身長(m)^2 ] (※4)
 となりますね。

プロセス3.  消費カロリーから経済的価値を計算

 よって※3と※4の式を計算することでカロリーの生涯医療費への影響値をとして経済的価値を計算できます。

身長ごとに適切なBMI値が異なるため、一律に何kgの人が何kcal消費するといくら、という形にはなりませんので参考までに、身長165cmの人、170cmの人、175cmの人のパターンで以下に試算しています。

 身長175cmの人の場合

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 身長170cmの人の場合

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 身長165cmの人の場合

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 以上の様になります。この表を見れば、自分の現在の身長と体重から、ザックリ100kcal消費した運動をしたときの生涯医療費の変化が分かりますね。

 例えば身長170cm、体重75kgの人が、100kcal消費する運動を能動的に行った場合は、生涯の医療費を約1600円節約したことになります。

 逆に、食べなくてもいいのにとりあえず食べる様な無駄な接種をしてしまった場合、つまり100kcalを無駄にとってしまった場合は生涯の医療費を約1600円増やす事になります。

 20円で60kcalくらいの一口サイズのチョコレートなら、もしそれを食べなかったとしても全く同じ生活をしていた場合、実は約1000円分損をしているのかもしれません。

 運動で100kcal消費しても、理論上は0,1kgも脂肪は落とせません。ですが将来の医療費を1600円減らせるならちょっとやる気になりませんか?

 一方で痩せすぎもよくないことが分かります。標準的なBMIよりも体重が少なすぎても、不健康で医療費は平均的には増えるのです。

あとがき

 もちろん、理想的なBMI値=健康とは限りません。ダイエットも痩せ方次第では逆に不健康になってしまう事もあるでしょう。あくまで、そのBMI値の平均的な人のデータであって、個別には様々な事情があります。

 ですのでBMIだけを判断基準に考えるのもあまりよくありませんが、こういった観点から一度自らの食生活や生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか?

 ここでは35歳~74歳のうちにかかる医療費を生涯医療費としています。75歳以降や35歳未満だとBMIよりもその他の病気の原因の方が多そうなので、生活習慣要因での差分を考えるならザックリこの数字でもいいのではないかなとは考えています。

*参考:35歳以上で現在の年齢に合わせて推計したい場合

 ここでは35歳~74歳時の合計を将来の生涯医療費としていますが、既に40代、50代の方もいらっしゃるとおもいます。しかし、医療費は年齢が増える程高くなる傾向にあるので、ザックリ年数で割っても精緻なモノは計算できません。

 上述の表に対して、ご自身の年齢に合わせて、下表の黄色の比率をかけていただいたものが、ザックリ、将来の医療費への影響値になりますのでよろしければご参考ください。

※2より著者作成
*この分析は、データ分析の面白さや健康意識の向上を目的としたものではありますが、ザックリ行ったものであり、データソースの信頼性・モデルの精度、ダイエットの効果などを保証するものではありません。この情報を参考にした結果、いかなる損害を被った場合でも当方は一切責任を負いません。あらかじめご了承ください。

データサイエンスで広告効率を劇的に改善させた話

 私の実績紹介を兼ねて、データサイエンスのアプローチから広告効率を劇的に改善させた話について書いてみました。守秘義務の都合上、顧客を特定できない様に内容を伏せておりますが、全て私の実話に基づく経験談となります。

 なお具体的にどんなデータ分析手法を使ったのか?というよりは、どんな役割を果たし、どんな問題を解決してきたのか?というポイントを中心に書いていきます。

<顧客Z社>

 この話で出てくるZ社は従業員数約20人程の企業で、年間売上は1億円位の中小企業です。元々社長が知人であり、私がマーケティングアナリスト(データサイエンティスト)として仕事をしている事を知ってご相談いただいたのがキッカケで、主にWebマーケティングでの集客についてご支援させていただくことになりました。

<当時の状況>

 Z社の広告費予算は年間500万円程、しかし社内にマーケティングの知見がある人は居ないため、広告運用業者に運用を任せていました。方針としても、とりあえずホームページを作ってネットで売上を立てていきたいという戦略はあったものの、代理店に任せっきりな状態でした。

問題点①:マーケティングリテラシーの欠如

 実際に携わらせていただいて、まず問題に思ったのは「代理店から送られてくる資料や提案を正しく判断できる人がいない」という事でした。

 広告代理店には広告運用に必要な設定やクリエイティブの作成などを行ってもらっていました。また運用結果も週次、月次でもらっていました。ですが、広告代理店から出されるそれらの数字が、どんな意味があるのかを全く理解できる人がいなかったのです。つまり、広告代理店の運用が全く上手くいっていなかったとしても、失敗していたとしても気づくことが出来ない様な体制でした。

 そのため、まずはZ社の担当者の方や社長に、Z社のビジネススキームに即して、最低限どんな指標を見ていくかを、専門的な知見が無くても分かる様にお伝えさせて頂きました。

問題点②:広告運用業者とZ社の考え方の違い

 広告運用業者は基本的には、「広告の運用」に責任を持ちます。そのため、「広告をしっかり運用して売上を最大化する事」にしばしば焦点が当てられます。しかし、一方で会社にとっては広告はあくまで手段の1つに過ぎず、会社全体の利益の最大化が最も重要になります。そのため、広告での売上を最大化すること(局所的な最適化)が実は会社全体の利益の最大化(全体最適化)になっていない、という事はよくあります。

 ただし、これは広告運用業者が悪い、という訳ではありません。利益には、単価や原価など様々な要因が関係しており、広告運用業者がそこにまで口を出せるパターンは少ないです。(会社側がそこまで情報を渡していない事も多い)そのため、広告運用業者には分からない全体最適化に関わる様な部分については、会社側が十分に把握し、その上で広告運用業者を上手く使っていく必要があるのです。

 実際にZ社のケースでは、具体的には詳しく見てみると次のような事が起こっていました。

・広告予算は月別で30万円と設定。(売上逆算)
・運用業者は、その月の予算を使い切るために効率的ではないキーワードにまで出稿していた

 Z社にとって広告予算は何か理由がある訳でもなく、ザックリと決められていました。それに対して運用業者は、依頼を遂行するためにその予算をキッチリ使う様に努力します。ですが、これが本当に会社の全体最適化になっているでしょうか?

 詳しく見てみると予算30万円のうち、20万円程度は効率の良いキーワードに対して出稿されていました。ですが、残りの10万円はもう効率の良いキーワードに出稿する余地が無かったため、少し関連度の薄いキーワードに対しても出稿がされていました。

 確かに関連度の薄いキーワードでも顧客化できる可能性はあるため、”売上の最大化”のためであれば正しい選択です。ですが、実際には”少し関連度の薄いキーワード”の部分については実はROI(投資収益率)を計算するとマイナスになっており、この広告は会社の利益最大化のためであれば出稿しない方が良かったのです。

 特に検証目的であったり、利益を減らしてでも売上を増やしたいという戦略を取っていた訳では無かったため、この非効率な部分の広告費の削減を提案し、他の施策等への投資へとご提案致しました。

問題点③:正しくPDCAが循環していない

 これが最も大きな問題でした。Z社では現状を分析して次のアクションにつなげていくというサイクルが全く出来ていませんでした。

 広告運用業者からは運用結果の報告があり、またZ社としても売上実績を見て「良かった」「悪かった」といった結果を見てはいました。ですが、結果を確認するだけで、良かったら運用業者が褒められて終わり、悪かったら運用業者が何かアイディアを出して新しいやり方を試す、といったサイクルで行われていました。

 ここで問題なのが「何が悪かったのか?」「何が良かったのか?」を分析する様な事は誰も一切していなかったことです。

 そもそも悪かった原因を探らないのは論外です。原因が不明なままでは、新しいやり方で上手くいくかどうかは、たまたま上手くいく可能性もありますが、博打の様なものです。また悪かった原因が実は広告の問題ではなく、たまたまマーケットの状況が悪化していたという可能性もあります。その場合、本当は上手くいっている運用のやり方を変えてしまい、かえって悪化してしまう事もあり得るのです。

 また良かった場合に、結果を確認して終わりというのは非常に勿体ないです。良かった原因を探り、何が効率的なのかを正確に把握する事で、「今後も変えてはいけないこと」が分かります。ですので、新しいことを試すにしても、これを把握しているかどうかでは成功率には雲泥の差が出ます。また、効率的だと分かった事から類推して、「これも効率的なのでは?」といった単なる勘とは違う、ある程度根拠に基づいた仮説を立てられるようにもなります。

 そのため、Z社の中で私はPDCAサイクルを正しく循環させるように支援させていただきました。

 新しくキーワードやメニューを設定する際には、それを検証するためにはどの程度の検証期間が必要で効率的だと判断できる水準、つまりKPIはどれくらいか?といった提案をさせてただきました。
 また運用実施後には運用データに対して、正しく集計・分析を行い、時には統計検定を用いて一時的なブレなのか真実なのか?といった判断も加えながら仮説を検証し、何が効率的で、何が非効率なのかを一つ一つ明らかにしてゆきました。
 そういったPDCAサイクルを繰り返しながらZ社に伴走支援させていただき、実際に2年程経った頃には以前と比較して広告による顧客の獲得単価が500%改善、つまり当初比で1/6になっていました

余談:Webマーケティング業界について

 Webマーケティングが出来る人というのは一言で言っても色々な人がいます。魅力的なクリエイティブやホームページを作るのが得意な人もいれば、私の様なデータサイエンティスト(マーケティングアナリスト)もいます。

 広告運用は設定自体はかなり簡単で、ある程度のPCリテラシーがあれば実は誰でもちょっと勉強すれば運用自体は可能です。専門的なスキルが必要になるのは、「Webマーケティングの知識」と「クリエイティブ力」と「分析力」になります。

 日本の現在の市場では、クリエイターは給与水準が非常に安く、逆にアナリストの様な人種は市場価値が高く労働単価も高いのが現実です。
 またマーケティングの分析は特に、業種・会社ごとにイレギュラーが多く、その会社のビジネススキームを正しく理解していないと間違った分析・見解になってしまう事も多々あります。そのため、マーケティングのアナリストにはビジネス理解力に加えて、パターン化できない場合にも要因を構造的に考えて対応できる様なロジカルシンキング力が必要です。これらの能力が高い人材は様々な業種で必要とされるため、結果として「質の高いアナリスト」は非常に市場価値が高くなります。(日本国内を出られれば年収1000万を超えるケースも珍しくありません。)

 このような状況を踏まえると、実は広告運用業者の多くはクリエイティブ力が十分なことは多いのですが、真の意味で「質の高いアナリスト」を必要な数だけ確保できている場合はかなり稀だったりします。実際のところ広告運用代行自体の相場が現在かなり低く、そのためか働き手となる社員やフリーランスも普通のアルバイトの最低賃金と大して変わらない報酬で募集されていたりするので、それでは質の高い人材を集められないのも無理はありません。とはいってもこれだけ相場が崩れていると、価格を上げて質の高いサービスを・・・というのもなかなか難しいのです。(そもそもアナリストの重要性自体があまり顧客に認知されていないため、結局価格で判断されてしまうというのもありますが・・・。)

 ですので運用自体やクリエイティブに関しては基本的にはちゃんとした広告運用会社に任せても良いかと思いますが、しっかりPDCAサイクルを回してどんどん最適化するなら、Z社の様にアナリストを多少費用が掛かっても別途用意しないといけないではないかなというのが手前味噌ではありますが私の個人的な見解です。

アンケートを正確に分析するための流れ【7つの手法と3つの注意すべきポイント】

アンケートを正確に分析するための流れ【7つの手法と3つの注意すべきポイント】

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アンケートは企業が商品やサービスに対する顧客の声を聞き、商品やサービスの現状を知ったり、改善する上で非常に有用です。
また、アンケートの内容を受けてマーケティング戦略をより効果的な方向に変更することもできます。

自社ツールでのアンケートの他、Google formや商品への口コミなどによる顧客の声は様々な企業が集めていますが、そのデータは「正確に」分析できていますでしょうか?

今回はアンケート分析を行う流れと手法7つと、その際に注意すべきポイント3つを紹介していきます。

目次

アンケート分析を行う上で注意すべきポイント3つ

実際にアンケート分析を行っていくと、アンケートデータに没頭してしまい、ついつい分析を行う上での前提条件を加味していない分析を行なってしまうことがよくあります。 アンケートの分析を行う際は、下記のような大前提を常に意識して分析を進めていくように注意しましょう。

このアンケートは、誰を対象にとったアンケートなのか?

アンケート回答者の属性をきちんと意識しておくことは非常に重要です。

よくあるケースとして、自社サービスの会員に対するアンケートの結果を、マーケティング施策全体に適用してしまうという間違いがあります。
自社サービスの会員はある程度ロイヤリティの高く、比較的サービスに肯定的な集団だと思われますが、これからマーケティングで狙っていく属性の集団とは特性が大きく異なると考えられます。

飽くまで自社サービス会員のアンケート結果は、自社サービス会員を対象にしてのみ効果を発揮する可能性があるということを意識しなければなりません。

分析の目的は何か?

そもそもの分析の目的を常に意識することも非常に重要です。

アンケートデータはデータ量も多く複雑な集計を行わなければならないことも多いため、データ分析に没頭し、そもそもの目的から逸れた分析を行なってしまうケースも散見されます。

常に目的に立ち返り、集計・分析を進めていきいましょう。

分析してわかったことはビジネス的に意味があるのか?

分析の目的は、マーケティングやその他施策にアンケートデータを活用することですが、分析してもビジネス的に意味がないことがあります。
「ビジネス的に意味がない」というのは、分析を行なってもビジネスインパクトが小さかったり、法律や社会通念上の理由で実現が難しい結論になってしまうということです。

例えば、「景気変動の影響で80%程度の売上変動が説明できる商品」の売上を回復させるために、残り20%の要因を分析するケースを考えてみます。
売上変動の20%の要因分析結果をマーケティング施策に落とし込めたとしても、ビジネスインパクトは最大で20%程度です。
しかし、そもそも分析精度自体が、20%収まっていれば十分なこともあるのではないでしょうか?
その場合、結局残りの20%の内訳が分かったとしても、景気変動の誤差でかき消されてしまう事も十分に考えられ、この分析で得られる示唆が何かしらあったとしても、ビジネス的には殆ど影響を与えないでしょう。

分析の最終目的は、どのようなビジネスインパクトを生み出せるかなので、ビジネス的に意味がある分析なのかどうかを常に考えながら、分析に取り組んでいきましょう。

アンケート分析の流れ

アンケート分析を行う際の流れは一般的に下記の通りです。

  1. データクレンジング
  2. アンケート集計
  3. 集計結果の分析
  4. 分析結果の解釈

クレンジングでデータを綺麗にし、集計、分析でとらえた事実を解釈するというのが一般的なアンケート分析の流れです。

それでは、それぞれの工程の詳細を紹介していきます。

データクレンジング

データクレンジングとは、自由記載の回答データに記載されている誤字や表記ゆれを修正したり、ハイフンの有無を統一するなどで、データを扱いやすくする工程です。
アンケート分析にかかる時間の半分以上はデータクレンジングの工程だといっても過言ではありません。

代表的なクレンジング処理の対象としては、株式会社AAAが「(株)AAA」「株)AAA」と様々な形で記載されてしまう「表記ゆれ」で、修正しない場合はそれぞれユニークなものとして集計されてしまい正確に集計ができません。
正しく「株式会社AAA」と表記を修正し統一することでデータの集計が容易になります。
データクレンジングの後には、表記の統一の他に「名寄せ」の工程を行なっていきます。

データクレンジングを通して、重複するデータを統合・整理することで、初めて意味のある集計を行うことが可能になります。

【クレンジングの注意点①】定期的にクレンジングを行うこと

新しい情報が定期的に追加される場合、データベース内にはクレンジング前の情報とクレンジング後の情報が混在してしまうことになります。

定期的にデータクレンジング処理を行うことで、データの質を保ち正確な集計ができるような環境をキープできるように心がけましょう。

【クレンジングの注意点②】機械的なクレンジングのみでなく、目視でデータの正誤を確認する

目視確認を定期的に実施することで、機械的なクレンジングでは抜けてしまっていた本来クレンジング対象にすべき情報を拾い上げ、データベースの質を向上させることが出来ます。
また、たまにデータを目視で眺めると、今までになかった分析視点を閃くこともあります。

Excelの置換機能やクレンジングツールを過信しすぎずに、定期的に目視チェックを行うことで安定した質のデータベースを実現していきましょう。

アンケートの集計・集計結果の分析方法7選

集計・分析には様々な方法がありますが、これから紹介するものは一般的によく行われる集計・分析方法です。

単純集計

単純集計とは、アンケートの各質問項目ごとに集計を行う方法です。
カウントするだけなので集計ミスが起こりにくく、集計結果の解釈もシンプルでわかりやすいものになります。
一方で、シンプルがゆえに、その結果だけを見てマーケティング施策を行うのは危険です。

下記の例のような分析ミスはいくらでも起こり得ます。

  1. 商品Aの購入意向がある男性は全体の70%
  2. そこで男性に向けて、チラシを用いて購入促進施策を実施
  3. しかし、思った以上に商品Aの購入が伸びなかった
  4. 実は10〜20代の男性の95%が商品Aが好きで、30代以降は商品Aを好きな割合が30%しかなかった。
    10〜20代はチラシをほとんど見ないため、施策効果がないのは当然で、10〜20代向けにSNSで商品Aの購入促進施策を実施すべきだった

単純集計は、集計、分析、結果の解釈が全て非常にシンプルで使いやすい集計方法ですが、単純集計の結果だけを見て判断せず、様々なデータを多面的に見て施策に落とし込んでいくことが重要です。

クロス集計

クロス集計とは、アンケートの各質問項目の掛け合わせによる集計を行う方法です。
性別や年齢層などの「属性」と他の質問項目を掛け合わせることで分析を行なっていく方法で、単純集計よりは集計が複雑になりますが、より詳細にデータを把握することが出来ます。

クロスする項目は2項目以上でも可能なので、「年齢」*「性別」*「〇〇な人」という3重クロス集計を行なっていくこともできます。
クロス集計の軸(掛け合わせ項目)を増やせば増やすほど、より詳細にデータを理解することが可能です。

一方で、集計軸を増やしすぎてしまうと集計結果が細かくなりすぎてしまい、解釈や実務や施策への落とし込みがしにくくなってしまいます。
最低でもサンプルサイズを30以上にすることを目安に、30に満たない場合は近い項目同士を結合させるなどデータを加工してから分析を行うことを意識しましょう。

また、集計は「絶対数」で集計するよりも「パーセンテージ(全体の割合)」で表記した方がいい場合が多いです。
なぜならば「絶対数」で集計してしまうと、回答者の母数の大きさに影響された分析を行なってしまうことになるからです。

サンプルサイズや表現方法(絶対数なのかパーセンテージなのか)などに注意してクロス集計を行なっていきましょう。

アソシエーション分析

アソシエーション分析とは「商品Aの購入者は、商品Bも購入していることが多い」など、無関係なように見えて実は何かしらの関係性があるものを見つけ出す際に使う手法です。
アソシエーション分析を行うことで、セット商品にすべき商品の組み合わせや、スーパーで隣に何の商品を置くべきか、などの非常に具体的なマーケティング施策を考えることができます。

また、自社商品だけでなく、他社商品との購入関係性を調べることも可能なので、
「商品Aの購入者は競合他社商品Z(特徴は〇〇)を購入している。自社で新しい商品Xに〇〇の特性を持たせればいいのではないか?」
など、マーケティングのみならず新商品開発への仮説を得る際にも活用することができます。

クラスター分析

クラスター分析とはアンケート回答者を特徴が似ている複数のクラスター(集団)に分けて分析を行う方法で、分けた集団の傾向や特徴を観察することで、より効果的なマーケティングを実現することができます。
クラスター分析には「階層クラスター分析」「非階層クラスター分析」の2種類がありますが、分析するデータ量が多い場合は、あらかじめクラスター数を指定する「非階層クラスター分析」にて行なっていきます。

クラスター分析を行うことで、特定の集団に対してより効果的な施策などを行うことが可能になるので

  • 男性向けのみにDMを送付していたが、効果があまり良くなかった
  • クラスター分析により、商品Aを買う保守的な20代男性は、特に購買余力があると推定されるので、商品Aを買った20代の男性を中心にDMを積極的に配布したら、以前より費用対効果が高くなった

のようにDMの費用対効果をあげる際などに用いられています。

主成分分析

回答者のアンケート結果をまとめ、より分析をわかりやすく・行いやすくする手法です。

膨大なデータがある場合は、アンケート結果の属性も多岐に渡ってしまうため分析が行いにくいという現象が発生します。
主成分分析を行うことで、アンケート結果の属性が似ているものを集約しデータを扱いやすくすることができます。
いわゆる次元圧縮を行うということです。

主成分分析はアンケートの項目が多い時などに有効な一方で、「主成分を抽出する=一部のデータは捨てる」ということを意味するので、主成分分析データだけを見ずに、全データも見つつ分析を行う必要があります。

出現頻度分析

回答者の回答中に出現する単語の出現頻度を分析することで、単語の重要性を分析する手法です。

「◯◯」(いい単語)「××」(悪い単語)「使いやすい」「高い」「△△」(商品の特徴)など、様々な単語をランキング形式で並べることができるので、回答者の商品への認識や思っていることを観察することが可能です。

分析する属性をあらかじめフィルター指定し、単語の重要性を分析することで、特定の属性の回答者がどのような単語をたくさん使っているかを知ることもできます。

センチメント分析

回答者が商品に対して持っている感情を3つの基準「肯定」「否定」「中立」で分析する方法で、回答者の感情を分析できます。

アンケート項目に自由記述項目があり、回答者が率直に感想などを書ける場合に有効です。
SNSの分析でもよく用いられる手法のひとつです。

分析結果の考察

ここまで、定性分析の方法を挙げてきましたが、技術力やブランド価値等の定性面の強みは定量的にな結果として出てきます。

例を挙げると、下記のようになります。

【結果】アンケートデータが伝える事実

分析者のバイアスがかかると事実が歪んでしまうので、事実を事実のまま記載していくことが重要です。
また、クロス集計などの手法を用いた場合には統計的に「検定」を行うことで、分析の確からしさを向上させることも可能です。
下記の例を考えてみましょう。

例①  WEBサイトのテーマカラー アクセス数 購入件数 購入率
3,000
30
1.0%
黄色
3,000
60
2.0%
例②  WEBサイトのテーマカラー アクセス数 購入件数 購入率
300
3
1.0%
黄色
300
6
2.0%

この場合、例①は
サイトのテーマカラー「赤」「黄色」は購入率に対して統計的に有意に影響があると言えるので、今後は「黄色」をテーマカラーにすべきと言えます。(※統計的には99%くらいの確率で、サイトカラーの変更による上昇だと言えます)

一方、例②では、「赤」「黄色」には統計的に有意に差があるとは言いきれず、たまたま購入者に偏りがあった可能性があるとも捉えられるので、テーマカラーを「黄色」にするべきかを判断できかねます。(※統計的には70%くらいの確率で、サイトカラーの変更による上昇だと言えますが、30%くらいの確率で違う要因だとも言えます)

このように統計的に「検定」を行うことで、分析結果が偶然なのか必然なのかを客観的に判断することができるので、意思決定者がより簡単に判断を下せるようになります。

【考察】結果を元に、実務上の意思決定を行えるように解釈したもの

考察では、想像力を働かせつつ常識的に考えながら、結果の解釈を行なっていきます。
様々なクロス集計結果をまとめて噛み砕くことも重要です。

例えば、下記のようなクロス集計結果がある場合の考察を考えてみます。
年齢層 Aの認知率 認知した人の購入率 普段見るメディア
20代
62.5%
20.0%
Youtub、WEBニュース
30代
57.5%
22.0%
WEBニュース
40代
50.0%
21.5%
新聞、テレビ
50代
30.0%
19.7%
新聞、テレビ
60代〜
25.0%
5.0%
新聞

この場合の解釈としては

  • Aという商品の認知率は20〜30代では平均で60%あるが、40代男性には50%、50代男性には30%しかない。
  • 特に50代の認知率は他の世代に比べて有意に差があると言える(※実際に統計検定を行うには回答数が必要です)
  • 40〜50代が普段見るメディアへの露出=広告が少ないのではないか?
  • Aを認知している人の購入率は60代以上の年代以外はどの年代でも差がないため、認知さえ取れれば40〜50代のある程度の購入は見込まれる

といった感じです。

注意点として、結果を解釈し考察する際は、大前提として考えるべき「誰を対象にしたアンケートか」「意思決定に活かせるか」を意識して行いましょう。

アンケート分析とソーシャルリスニングとの違い

twitterやInstagramに代表されるSNS上でのコメントやテキストを解析することを、一般的に「ソーシャルリスニング」と言います。

ソーシャルリスニングとアンケート分析との違いは
  • 記載項目が決まっていないこと
  • リアルタイムな集計ができること
  • 回答が自由記述であること
などがあげられます。

つまり、ソーシャルリスニングには
  • 率直な意見が聞ける
  • アンケートに比べ簡単にデータが集められる
などのメリットがあります。

目的に合わせてアンケート分析とSNS分析を使い分けていきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。 今回はアンケート分析を行う上で注意すべきポイント3つと分析手法を7つ紹介しました。

注意すべきポイント3つの
  • このアンケートは誰を対象にとったアンケートなのか?
  • そもそも分析の目的は何か?
  • 分析してわかったことは意思決定に活かせるのか?
は本当に意識から抜けやすいものなので、常に意識して分析を行なっていきましょう。

また、今回は分析手法を7つ紹介しましたが、データ量や分析の目的によって適切な手法を選んでいくことが重要なので、慎重に手法の取捨選択を行いましょう。

もし、アンケート分析でお困りの場合は、どんな質問でもお気軽にご相談ください。

【経営のプロ】MBAと中小企業診断士の違いとは?両方取るべき?

【経営のプロ】MBAと中小企業診断士の違いとは?両方取るべき?

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経営に関する能力を表すものとして『MBA』『中小企業診断士』の2つがあります。

私はMBAと中小企業診断士の両方を保有しており、経営コンサルタントやデータサイエンティストとして活動をする上で実感したこの2つの違いを紹介します。

目次

中小企業診断士とMBAの違い

中小企業診断士は国家資格であり、経営コンサルタントの資格の一つとなっています。中小企業診断士がカバーすべき分野は『企業経営理論』『財務・会計』『運営管理』『経営情報システム』『経済学・経済政策』『経営法務』『中小企業経営・政策』の7つがあります。(1次試験)資格取得はこれらの合計点で決まりますが、すべての科目で最低限のスコアを取る必要があるため、全ての分野である程度の知識があることが保証されています。

*参照:中小企業診断士試験の概要(公式HP)

一方、MBAは経営学修士で、大学院で経営学を終了した方の総称です。ですので、経営大学院卒業という意味なので正確には資格とは少し違います。MBAのカリキュラムは大学院によって違うのですが、分野としては概ね中小企業診断士の7科目とほぼ同じです。しかし学習の範囲にはある程度自由がある場合も多く、『専攻』といった形で特定の分野に特化したコースが設けられている場合もあります。私の場合『経営戦略』と『会計学』が必須の科目とはなっていましたが、あとはある程度自由に選択できる様になっていました。その上で、選択した分野に関しては単位取得のためにかなり深い所まで学ぶことになります。

中小企業診断士とMBAはどっちがいい?

MBAと中小企業診断士はどちらが良いのでしょうか?これを『スキル面』と『営業面』の2つの面から考えてみます。

『スキル面』

スキル面から言うと、MBAと中小企業診断士では以下の違いがあります。*もちろん、あくまで学習内容の差なので人によって能力には差があります。

・中小企業診断士の方がジェネラリスト、MBAの方がスペシャリストな傾向がある。

・中小企業診断士の方が体系的に、MBAの方が具体的に理解している。

 中小企業診断士の場合、試験に受かるためには経営学の理解がまず必須となります。そのために『知識』を網羅的に、体系的に理解しておく必要があります。例えば同じ戦略論でもポーターはポジショニングベースの戦略論、バーニーはリソースベースの戦略論といった様に理論や知識の分類も体系的に理解しておく必要があります。また資格取得の条件からも、経営学の広い分野である程度の知識の勉強が必要とされるため、結果として広い知識を得ることになります。

 一方、MBAの場合は知識よりも理論やその理論を活用した具体的な事例の研究に重きを置かれています。例えば、講義内でのディスカッションや事例研究を通じて1つの理論に対して『なぜあの企業は成功・失敗したのか?』といったことを深く追求していきます。また卒業のために単位を取る科目も自分の得意な内容・特化したい内容に寄せることが出来るため、特定の分野でより深いスキルの習得をすることになります。

 ちなみに私の場合は、マーケティングリサーチを専攻していたため、マーケティングデータ分析のスペシャリストとなりました。

『営業面』

 営業面でもMBAと中小企業診断士でも違いがあります。これは、私が実際に営業活動をしている時に感じた所感です。営業面とは、特に見込み客、所見の人にどう思われるのか?という観点でこれは『実際のスキル』とは違います。

・『経営に専門家』という事を示すだけなら片方でも十分

・『MBA』は修士号なので学歴、『中小企業診断士』は国家資格だから箔がある

・体感的には『MBA』の方がややウケが良い。

 実際のところMBAで学習した人・中小企業診断士の勉強をした人でなければ、『スキル面』の違いまでの印象はありません。なので、『経営コンサルタントとして十分な能力がある』、『経営に詳しい』という事を示すだけであればどちらでも証明能力としては変わらないでしょう。
 イメージとしては、『英語の能力が高い』という事を示すために『TOEIC』や『TOEFL』で高い点数を持っているのに近いとおもいます。

 しかし、一定以上の知識人を相手にする場合『MBA』が響く人もいれば『中小企業診断士』の方が響く人もいます。

 これもイメージとしては、『TOEIC』や『TOEFL』では抱くイメージが違う人もいるのと同じようなものです。例えば、『MBA』が資格ではなく『経営の大学院卒』であるという事を知っている方である場合、MBAだと単純に『大学院を卒業した人』と思われることも実際は少なくないです。そういった方に対しては国家資格である『中小企業診断士』を持っていると言った場合の方が信頼性が増す傾向にあります。

 逆に『中小企業診断士』は、国家資格ではあるものの独占業務は無いのですが、独立されている方は一般的に『補助金』などの中小企業向けの制度活用の面から支援をされる方が多い傾向にあります。そのため、そういった制度利用の際に相談する専門家的なイメージマーケティングの様なフロントビジネスの支援へのイメージはあまり多くない印象でした。

 また『中小企業診断士』は経営コンサルタントの方の多くが持っているため、経営コンサルタントとして仕事を得る際に中小企業診断士を持って事がプラスになる事はあまりありません。それよりも『MBAでマーケティングを専攻していた』といったより専門性の高いアピールができるMBAの方がウケがいいと私は感じました。

中小企業診断士とMBAは両方取ることに意味あるのか?

中小企業診断士とMBAは両方とも取得することに意味があるのか?という論点はよくあります。個人的な結論としては経営コンサルタントとして活動する上では意味はあるが、重要性は高くないというのが所感です。

先述の様に『経営の専門家』である事を示すだけであれば、MBAでも中小企業診断士でも大して変わりません。多少のイメージの違いも、実際に提供するサービスを提供し始めることが出来れば、結局は能力勝負なので変わりません。ただ営業においてファーストインプレッションを最大化するのであれば十分意味はあるので、両方取っておくとより良いでしょう。

また中小企業診断士やMBAのどちらかだけで経営コンサルタントとして活動している方も少なくありませんし、十分サービスにはなるので問題はないと思います。しかし、同じような分野ではあるものの、サービスの質を高めるという観点でも両方を取得する事には意味があります。例えば私の様にMBAを先に取得している場合は、中小企業診断士の勉強をすることで自分が会得していない領域に気づくことが出来、結果として提供できるサービスの幅を広げることに繋がります。一方で、中小企業診断士から入っても、MBAの勉強をすることでマーケティングやファイナンスといった特定の分野で専門的な提案も出来る様になります。

中小企業診断士・MBAの知識

以上、いかがでしたでしょうか。当サイトでは、MBAホルダーのデータサイエンティストが自分の勉強や復習を兼ねて『MBA』や『中小企業診断士』での学習内容も分かりやすく紹介しています。資格の勉強をされる方や、経営の知識を身に着けたい方はよろしければ是非ご覧ください。

SWOT分析の使い方【花王の業界構造分析を例に解説】

筆者がMBA時代に花王の業界構造分析を行ったレポートを元に解説しています。MBAってこんなことしてるんだな、と思ってもらえれば幸いです。

株価とCAPM理論

株価とCAPM理論

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リターンとリスク

 ファイナンス理論の世界では、リターンとリスクは相関関係にあります。

「小さなリスクでは大きなリターンは期待できない」「リスクが大きければ期待リターンも大きい」ということです。(詳細はリスクとはをご覧ください)

 

投資家は、リターンを求めて市場に参加して、自分の満足する価格で株を買いますので、

【投資家A】【投資家B】から株を買い、株価が形成されていきます。

同様に【投資家C】【投資家D】から株を購入し・・・

という感じです。

 

では、株式市場では株価の変動をどうにかして表現できないでしょうか?

例えば、日本市場の株価全体が落ち込んでいる時、日本を代表する企業である「トヨタ自動車」や「ソフトバンク」の株価も下落していることが多いです。

このような動きは日本市場と線形関係で表現出来そうです!

一方で、日本市場の動きに関係なく株価が上下することもあります。

これは、線形では無理そうです。。。

 

この様に、株価の動きは複雑ですが、株価の動き=リターンを数式化したものがCAPM理論です。

CAPM理論における株価のリターンの数式はこの様に表現されます。

 

 

 以下でこの数式を説明していきます。

マーケット依存リターン( β 部分)とリスクフリーリターン(Rf)

 左辺の Ri 求めたい企業の期待リターンです。

右辺の数式は2つの部分に分けることができます。

① β(RmーRf)

② Rf

① β(RmーRf)

β(RmーRf)は、マーケットに依存するリターン部分を表します。

マーケットリターンは Rm の部分です。

(RmーRf)はマーケットリスクプレミアムと呼ばれるもので、マーケットに参加したリスクに対するリターンを示します。

β は個別株のリターンの変動が、マーケットの変動にどれだけ依存しているかを示します。

例えば β =1ならば、マーケットと同様の動きをしますし、β=-1ならマーケットと正反対の動きをします。

( β の話は長くなるので、詳しくはβとWACCをご覧ください)

 

② Rf

Rf はマーケットリターンに全く関係なく発生する様なリターン部分を示しています。

つまり、いつでも発生するリターンのことです!

これは国債のリターンとすることが一般的です。

マーケットがクラッシュしても国債の価値は残ると考えられているからです。なので、国債の利回りの値を調べて使用しましょう。

 

以上の2つの数式から  Ri(求めたい企業の期待リターン)を求めることが出来ます。

 

このように簡単に期待リターンを算出できるのがCAPM理論の良い点です。

まとめ

CAPM理論は中学生でもわかるような数式で株価の期待リターンを表現できるため、理解しやすく、非常に使いやすいです。

市場リターン株価リターン国債利回りがわかるだけで、将来の期待リターンが算出できるのは夢のようです!

一方で、CAPM理論は良くも悪くも単純で、本当にこんなに単純なのかという気もします。

投資家やAIの様々な考えによって株価が形成されているとすると、その株価リターンを一次方程式で表現するのは確かに単純すぎる感があります。

最近は、CAPM理論に代わる『3ファクターモデル』等も提唱されており、CAPMが成立するか等はよく議論されています。

ですが、期待リターンが簡単にわかるというメリットは、デメリット以上の価値があるのではないでしょうか?

ぜひ、お気に入り企業の期待リターンを算出してみてください!

CAPM理論の例題&解答はこちらよりご覧ください

金融知識を学ぶ【企業力指数とは?フィルタとして使いやすい便利な指数】

金融知識を学ぶ【企業力指数とは?フィルタとして使いやすい便利な指数】

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企業力指数とは?

 「企業力指数」というのを聞いたことはあるでしょうか?

企業力指数=企業評価のための指数で、松本敏史教授が考案したものです。

松本教授は早稲田大学大学院会計研究科教授と京都大学経営管理大学院非常勤講師を兼任し、

財務会計論や企業価値評価等を教えているファイナンスのエキスパートです!

 

さて、企業力指数の算出方法ですが、以下の5つの指数の平均値=企業力指数となります。

 

  • 収益力指数  = 売上 ÷(売上−経常利益)
  • 支払能力指数 = 流動資産 ÷ 負債
  • 活力指数   = 売上 ÷ 資産
  • 持久力指数  = (資産−負債)÷ 負債
  • 成長力指数  = 資産 ÷(資産−当期純利益)
  • 企業力指数  = 上記5つの指数の平均

 

現在分析している企業と、比較したい企業があった際に、

双方が異なる業界に属していると元来の財務分析では比較しづらいということがありますが、

企業力指数を用いると、同じものさしで企業を測ることが可能になります。

もちろん、業界ごとに特色が出ますので、業界の平均値等を勘案して補正が必要ですが、

容易に様々な企業を比較できるのは画期的です!

企業力指数のメリット・デメリット

 簡単に比較ができる企業力指数ですが、そのメリットとデメリットを考えてみましょう。

メリット
  • わかりやすい

1.0を基準に数値が算出されるため、直感的でわかりやすいです。

 

  • 専門家でなくとも容易に計算が可能

計算式が簡単なので、財務諸表さえ読めれば誰にでも計算が可能です。

また計算式もわかりやすく、簡単に指標の数値が算出できます。

 

  • 異なる企業を同じものさしで測定できる

異なる業界の企業も比べられるので、企業比較の際に便利です。

 

△デメリット
  • 詳細な分析までは不可能

良くも悪くも簡易的な計算なので、財務諸表の一部分のみを反映しています。

なので、個別の詳細分析をする際には企業力指数は不向きだと言えます。

 

  • 業界毎に補正が必要な場合がある

業界によっては企業力指数の平均値が低い業界もあります。

したがって、業界毎に補正が必要な場合もあると考えられます。

 

  • 数値が簡易的なため、検証が必要

企業力指数自体が企業の本当の力を表さない場合もあります。

例えば、一般的に企業力指数が0.7を下回った状態が続くと倒産の可能性が高くなると言われていますが、

一方で1.0を上回っていても、企業の力が弱まっていることもあります。

 

※例えば、企業が営業に必要な資産を売却し、BSを圧縮しつつ負債を軽減している状態だと、

キャッシュを稼ぐ力は低下していますが、企業力指数は上昇することがあります。下記のような状態です。

 企業力指数のメリット・デメリットは以上になります。

簡易的に算定する場合には非常に有効ですが、企業力指数だけで判断することは危険かもしれません。

まとめ

今回は企業力指数の紹介やメリット・デメリットの考察でしたが、いかがでしたでしょうか?

企業力指数は、計算が簡単でわかりやすいという点で、初学者から使える非常に使いやすい指数です。

一方で、企業力指数単体で判断してしまうと、判断を誤ることもあるので注意が必要です。

企業力指数は企業選定の際のスクリーニングや、企業間をざっくりと比較したい際に向いている指標と言えそうです。

他の分析手法と組み合わせて使うことで、より意味のある分析が可能になるかと思います!

財務分析や定性分析に関してはこちらも参考にしてみてください。

>> 財務分析の方法 〜基礎編&実践編〜

>> 企業の定性分析 ~定性分析の手法:3つのフレームワークで分析してみる~

ファイナンス公式集

ファイナンス公式集

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記事で扱っているファイナンス関連の公式をまとめてみました。

備忘録にどうぞ。

目次

財務分析系

企業価値評価系

ポートフォリオ系

必要な数学的公式

ファイナンス例題集【DCF、株価、デュレーションなど】

ファイナンス例題集【DCF、株価、デュレーションなど】

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財務分析

財務分析に関する例題と解答をまとめています。

実際に株式投資する会社を財務分析すると結構面白い視点が見えたりします。

例題は証券アナリスト試験で出るような問題を意識して作成しています。

 

■問題.各社のROAを求め、売上高利益率と総資産回転率に分解せよ
財務諸表 J K
売上高 100億円 300億円
売上総利益 40億円 60億円
営業利益 20億円 30億円
総資産 250億円 600億円

解答

J社ROA:20 / 250 = 8.0%

J社売上高利益率:20 / 100 = 20%

J社総資産回転率:100 / 250 = 0.4回転

K社ROA:30 / 600 = 5.0%

K社売上高利益率:30 / 300 = 10%

K社総資産回転率:  300 / 600 = 0.5回転

■問題.各社の流動比率、自己資本比率、財務レバレッジを求めよ
財務諸表 S社 G社
流動資産 100億円 300億円
流動負債 100億円 200億円
自己資本 50億円 200億円
総資産 250億円 600億円

解答

S社流動比率:100 / 100 = 100%

S社自己資本比率:50 / 250 = 20%

S社財務レバレッジ:1 / 20% = 5倍

G社流動比率:300 / 200 = 150%

G社自己資本比率:200 / 600 = 33.3%

G社財務レバレッジ:  1 / 33.3% = 3倍

理論株価の算出

ファイナンス理論を用いれば、理論株価を算出することができます。

もちろん絶対にあっているわけではないですが、一種の指標として使うことができます。

■問題.X社に関して以下の問いに答えよ

(A)X社は株式β=1.1 Rf =2.0% Rm =6.0% である。同社の資本コストを求めよ

(B)X社は来季25円の配当を予定している。また2年後以降の配当金は毎期3%で成長すると期待されている。現時点でのX社の理論株価を求めよ

(C)X社の1年後の理論株価はいくらか

(D)X社のキャピタルゲインと配当利回りの合計は資本コストと一致しているか

 

解答

(A)資本コスト=β( Rm – Rf )+ Rf = 1.2 ( 6.0% – 2.0% )+ 2.0% = 6.8%

(B)理論株価=配当金/ (資本コスト–成長率) = 25/ (6.8% – 2.0%) = 520.833..円

(C)

1年後の配当金を用いて考える。

理論株価=25×(1.02)/ (6.8% – 2.0%) = 531.25円

(D)

キャピタルゲイン= (531.25 – 520.833..) / 520.833.. = 2.0%

配当利回り= 25/ 520.833.. = 4.8%

合計は資本コストと一致している

 

■問題.配当金が毎年40円という定額配当モデルを前提とする。

理論株価が2,000円であるとき、同社の資本コストを求めよ(無借金とする)

 

解答

理論株価と資本コストの関係は 理論株価=配当/資本コスト

従って、求める資本コストは 40円 / 2,000円 = 2.0%

 

 

■問題.P、Q社に関して以下の問いに答えよ
分析結果純資産/1株ROE配当性向資本コスト
P2,000円8.0%50%9.0%
Q1,000円10%40%7.0%

(A)P、Q社それぞれの理論株価、成長率、PER、PBRを算出せよ

(B) P社が配当性向を100%にすると、理論株価はいくらになるか

(C)Q社が配当性向を50%にすると、理論株価はいくらになるか

 

解答

(A)

配当金=純資産×ROE×配当性向

成長率=ROE×(1−配当性向)

理論株価=配当金/(資本コスト−成長率)

PER=1株当たり純利益/ 株価

PBR= 株価 /1株当たり純資産

算出結果配当金成長率理論株価PERPBR
P80円4.0%1,60010倍1.6
Q40円6.0%4,000円40倍4.0

 

(B)P社が配当性向を100%にすると、配当金と成長率に変化が起きる

算出結果配当金成長率理論株価
P160円0%1,777.78..円

 

(C) Q社が配当性向を50%にすると、配当金と成長率に変化が起きる

算出結果配当金成長率理論株価
Q50円5%2,500円

βとWACC

βやWACCは企業価値評価やリスクを考える上で大事な指標になります。

そもそもβとWACCって何?って方はこちらをどうぞ。

>>βとWACCってなに?どんな場合に使うの?

 

■問題.X、Y社に関して以下の問いに答えよ
財務諸表他XY
売上高4,000億円2,500億円
営業利益200億円200億円
当期純利益150億円150億円
有利子負債0円300億円
純資産2,000億円500億円
有利子負債利率0.0%2.0%
β(ベータ)0.81.2
配当金104円100円

※ Rf=2.0% Rm=6.0% 法人税率=30% とする

(A)X、Y社のROAを求めよ

(B) X、Y社のWACC、理論株価を算出せよ

 

解答

(A)

総資産=純資産+有利子負債

X社ROA:200 / 2,000 = 10.0%

Y社ROA:200 / (300 + 500) = 25.0%

(B)

資本コスト=β( 6.0%−2.0% )+ 2.0%

WACC公式:βとWACCってなに?どんな場合に使うの?を参照してください。

X社資本コスト:0.8 ( 6.0%−2.0% )+ 2.0% = 5.2%

X社WACC: 5.2%(無借金のため)

X社理論株価:104円 / 5.2% = 2,000円

Y社資本コスト:1.2 ( 6.0%−2.0% )+ 2.0% = 6.8%

Y社WACC: 6.8% ( 500 / 800 ) + 2.0% ( 300 / 800 )×(1−30%) = 4.775%

Y社理論株価:100円 / 4.775% = 2,094.24..円 

 

デュレーション

デュレーションは投資の回収期間を示す指標です。

修正デュレーションやらコンベクシティもデュレーションから求められるので、かなり幅のある指標と言えます。

デュレーションに関してはこちらをどうぞ。

>>デュレーションってなに?どんな意味があるの?

 

■問題.各債権のデュレーションを求めよ
CF/年数1年目2年目3年目4年目5年目
債権A1,000円1,000円1,000円1,000円11,000円
債権B500円500円10,500円
債権C0円0円0円10,000円

なお、各債権の価格は以下の通り。

債権A:13,205.795円

債権B:10,500円

債権C:8,227.02475円

 

解答

(債権A)

最終利回りt:

と表現できるので t = 3.0%

クーポンレート:10%

デュレーション:

 

(債権B)

最終利回りt: と表現できるので t = 5.0%

クーポンレート:5%

デュレーション:

 

(債権C)

最終利回りt:  と表現できるので t = 5.0%

クーポンレート:5%

デュレーション:クーポンレートは 0% なので デュレーション = 残存期間 = 4年

 

DCF法

企業価値評価をする際に用いる方法の1つがDCF法です。

そもそもDCF法ってどんな手法?という方はこちらをどうぞ。

>>企業分析に欠かせない! DCF法とは?

 

■問題.F社に関して以下の問いに答えよ
F1年後2年後3年後
FCF400億円380億円450億円

(A)4年目以降のFCFが毎期450億円で、一定だとするとF社の企業価値はいくらか。ただしWACCは8.0%とする

(B)4年目以降のFCFが毎期3%で成長する場合、F社の企業価値はいくらか。ただしWACCは8.0%とする

 

解答

(A)企業価値=将来CFの現在価値の合計

(B) 企業価値=将来CFの現在価値の合計

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回はファイナンスの例題&解説をまとめてみましたが、いざ書き出すと色々な指標があって、全部を最大限活用するのは難しいですよね。

1つの企業や1つの業種で絞って、色々な面から分析したら面白そうですね!

地道に探せばお宝銘柄も見つかるかもしれないので、みなさんもぜひ企業分析に活用してみてください。

 

デュレーションってなに?デュレーションの意味と計算式【投資用語解説】

デュレーションってなに?デュレーションの意味と計算式【投資用語解説】

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デュレーションとは?

 『デュレーション』という言葉をご存知でしょうか?

 主に債券投資で使われる指標で英語表記では『Duration』と綴ります。

 デュレーションとは、ザックリ言うと「投資の平均回収期間を示す指標」です。

 この指標が小さい程回収期間が短く、大きいほど回収期間が長いと考えて構いません。そしてこの指標は小さければ小さいほど良いです。

なぜデュレーションは重要なのか?

 投資において、回収期間は非常に重要な指標です。回収期間が短ければ短いほど、投資のデフォルトリスク(例えば投資先の会社が倒産して債券が回収できなくなるリスク)は小さくなります。

 早期に回収できれば再投資をすることも可能で、結果的に大きな収益も得られます。

 ではそれなら「投資が完了するまでの長さ」で見れば良いのでは?となると思います。

 しかし投資はそれほど単純ではありません。回収するタイミング金額の大きさも非常に重要なのです。

 そして、それらを考慮して『投資の回収期間』を評価できるのがこのデュレーションなのです。

 

 ちょっとややこしいですが具体的な例を挙げて説明します。

 例えば、残存期間5年の債券に投資する2つの場合を考えましょう。

  1. 価格100万円で購入し、5年後に120万円が返ってくる
  2. 価格100万円で購入し、1年後に100万円・2~5年後に毎年5万円が返ってくる。

 上記の2つの投資はどちらも投資の回収期間は5年で、回収金額も100万の投資に対して120万で同じです。

 しかし、それぞれ回収するタイミングが異なります。ではどちらの方が好ましい投資でしょうか?

 

 間違いなく2のパターンですよね。

 2の場合なら2年目以降に債券がデフォルト(回収不能になっても)しても初期の投資額を回収できるからです。

 また1年目後に100万円を回収できれば、その100万円を使って同じ債券に再投資をすることも可能です。

 

 この両者のデュレーションを計算すると以下の様になります。

 パターン1・・・ 5.0

 パターン2・・・ 1.3

 すると投資の完了するまでの期間だけでみるとどちらも5年で同じですが、デュレーションではパターン2<パターン1となり、パターン2の方が小さくなります。

 つまり、デュレーションで比較することで、早いタイミングで出来るだけ多くの額が回収出来るという事も考慮して比較をすることが可能になります。

 すなわち、デュレーションとは投資リスクや収益性を測る一種の指標と見ることが出来ます。

マコーレ・デュレーション

 一般的にデュレーションと言われるものがマコーレ・デュレーションです。

 計算式ではマコーレ・デュレーション = 投資に対する平均回収期間 と表されます。

*若干数学的な話に入るので数字が苦手な方は、この節は読み飛ばして頂いて構いません。

計算式:

*Dmac:マコーレ・デュレーション

CFt: t期キャッシュフロー・・・t期(t年後)にいくらお金がもらえるのか?

r : 割引率         ・・・この投資(債券)の利率(年間の金利)

 ここでCFtを1+rのt乗で割ったものは、t期キャッシュフローの現在価値となっています。

 つまり、マコーレ・デュレーションとはキャッシュフローの現在価値で期間を加重平均したものとなっているのです。

 ※現在価値に落とし込んだ時に、回収額が大きいキャッシュフローの年により重みづけがされるような計算となるということです。

  先ほどの例で説明すると、パターン1であれば1年後にキャッシュフロー集中しているのでより1に重みづけを、パターン2であれば5年後にキャッシュフローが集中しているので5に重みづけをした平均となります。

 ちなみに債券の価格は、その債権から得られるキャッシュフローの現在価値の合計と等しくなっています。つまり、先述の式の÷記号の右側の項はそのまま債券価格となっています。

 *P:債券価格

 *CFt: t期キャッシュフロー・・・t期(t年後)にいくらお金がもらえるのか?

 r : 割引率         ・・・この投資(債券)の利率(年間の金利)

修正デュレーション

 またデュレーションの指標としてはもう一つあります。それが修正デュレーションです。修正デュレーションは計算上では上記のマコーレ・デュレーションを1回割り引いたものとして表されます。

計算式:

 

 *CFt: t期キャッシュフロー・・・t期(t年後)にいくらお金がもらえるのか?

 r : 割引率         ・・・この投資の利率(年間の金利)

 なので修正デュレーションも基本的には投資の回収期間を示すものと考えて構いません。

 しかし、修正デュレーションにはもう一つ重要な意味があります。

それは利回り変化に対する投資価値(債券価格)の変動率です。

 債券は利回りが変わるとその価値も変わります。たとえば修正デュレーションが1の債券投資の場合、最終利回りが2%変化すると債券価格も2%変化するという事です。同じく修正デュレーションが2の債券投資の場合は、最終利回りが2%変化すると債券価格は4%変化するということになります。

 つまり修正デュレーションが大きいほど、金利変動の影響を受けやすいと取る事も出来ます。

 *ここから先も若干数学的な話に入るので数字が苦手な方は、この節は読み飛ばして頂いて構いません。

 なぜ?この修正デュレーションが利回り変化に対する債券価格の変動率になるのか?というと以下の様な関係式となっているからです。

債券価格Pとすると

債券価格Pの金利rに対する変動率は、Pをrで微分したものなので、修正デュレーションDと以下のような関係となります。

計算式:

 

*
P: 投資価値
r: 利回り(=投資家の期待する割引率)
Dmac: マコーレ・デュレーション
P: 債券価格
D: 修正デュレーション

 つまり「債券価格Pの金利rに対する変動=ー修正デュレーション×債券価格P」という関係性になっているのです。

 また符号はマイナスなので修正デュレーションが1ということは、金利が2%上がると債券価格は2%下がるという事になります。

まとめ

 デュレーションに関して記載してきましたが、いかがだったでしょうか?

 マコーレとか修正とか書いてきましたけど、少し専門的なので正直普段は使わないです。笑

 ですが、こんな投資の見方もあるという感じで理解頂ければ嬉しいです。

 

 数式自体は簡単なので、Excelでベースを作ってしまえば応用が利きます。

 債券を評価する一つの軸として、使用してみるのもいいかもしれないですね!

 例題も用意したので、興味がある方はこちらからどうぞ。

>> ファイナンス例題集【DCF、株価、デュレーションなど】

倍プッシュのリスクを数字で考える【マルチンゲール法】

倍プッシュのリスクを数字で考える【マルチンゲール法】

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ギャンブルや投資において負けない戦略として、マルチンゲール法は非常に有名です。

マルチンゲール法という言葉は知らずとも、
その中身を知っている方は多いのではないでしょうか?

目次

マルチンゲール法とは?

 マルチンゲール法とは簡単にいうと、”1/2の確率で勝てば賭け金が倍、残りの1/2の確率で0になる、という様な賭けにおいて、”負けた場合にはその前に賭けた額の倍を賭ける”という方針で行えば負けることはない。”という必勝法です。

 例えば、1回目で100万円を賭けて負けてしまっても、2回目で倍の200万円を賭けて勝てばトータルでは+100万(1回目のマイナスー100万+2回目のプラス200万)となり1回目の損も取り返せます。
 同様に、2回目で負けてしまっても3回目でさらに倍の400万円を賭けて勝てばトータルでまた+100万(1回目のマイナスー100万ー2回目のマイナス200万+3回目のプラス+400万)となりこれまでのマイナスの全てを取り返せます。

 もちろん、この必勝法には有名な弱点があります。それは、”資金は無限ではない”という点です。たとえば元から300万円しか持っていなかった場合は先ほどの例では2回しか賭けることができず、2回目で失敗した場合有り金全てを失うことになってしまうのです 。

マルチンゲール法の魅力

 しかし、それでもなおマルチンゲール法には魅力があります。それは資金は無限ではなくとも、数回この戦略で回せる余力があればかなり高い確率でプラスの収益を得ることができるからです。

 例えば700万円のお金を用意して、100万円から賭けをスタートするとします。”一度でも勝ったら賭けを終了する”と決めて賭けた場合、87.5%の勝率で+100万円を得ることができます。

 そう聞くと、9割近くの確率で100万円増やせるならやってみたい!!という気持ちになってしまいますよね。

 これがマルチンゲール法の魅力です。

必勝法なのに期待値は0の戦略

 しかし、マルチンゲール法が期待値の高い戦略かというとそうではありません。実は期待値を計算すると0になります。それもそのはず、もともと期待値0の賭けにどう参加するかどうかだけなのですから、期待値が変わることはありません。

 先ほどの700万用意して100万を賭ける例で実際に損益の期待値を計算してみると  

 87.5%×100 – 12.5%×700 = 0

 そして期待値0なのは資金をどれだけ多く用意しても同じです。負けても倍でかけられる回数が増えれば増えるほど、利益を得られる確率は高くなりますが、その分だけ負けた時の損失が雪だるま式に増えていってしまうのです。

収益率から冷静に考えてみる

 とはいえ、ほとんど負けないんだから大丈夫だろう、自分は勝ち逃げするから大丈夫と多くの人が思い、数々の人が失敗しているのも事実です。

 このマルチンゲール法を冷静にみる見方として”収益率”という見方を私はお勧めします。

 それは、”マルチンゲール法で狙う収益率を、用意している資金に対して何%とするか?”と考えることです。

 先ほどの700万円の例では用意している資金700万円に対して狙う収益は100万円なので

 100万/700万 = 14.3%が狙う収益となります。

 つまりこの賭けは、”87.5%の確率で14.3%の利益を得ることができるが、12.5%の確率で全てを失う賭けである”とも言い換えることが出来ます。

 多少主観もあるかもしれませんが、『たかだか14.3%の利益のために、10回に1回以上全てを失う様な賭けをするなんて、、、』と個人的には結構ローリターン・ハイリスクな賭けに見えます。

 ちなみに、目標利益と損失を得られる確率、利益を得られる確率の推移は次の様になっています。

 

 実はマルチンゲールで得られる収益率と、有金全てを失う確率の数字は回数を重ねれば重ねるほど、ほぼ同じになるんですね。

 例えば6.67%の利益を狙ってマルチンゲール法を行うと、破産リスクも6.25%と大体同じくらいになります。

結論

 マルチンゲール法は破産確率≒収益率となる手法です。

 投資においても、損をした時に大きく投資して損を取り返そうとする様な状況になることは少なくないと思います。その際は是非このマルチンゲール法の話を参考に、冷静に投資の意思決定ができる様になれば幸いです。