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株価とCAPM理論

株価とCAPM理論

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リターンとリスク

 ファイナンス理論の世界では、リターンとリスクは相関関係にあります。

「小さなリスクでは大きなリターンは期待できない」「リスクが大きければ期待リターンも大きい」ということです。(詳細はリスクとはをご覧ください)

 

投資家は、リターンを求めて市場に参加して、自分の満足する価格で株を買いますので、

【投資家A】【投資家B】から株を買い、株価が形成されていきます。

同様に【投資家C】【投資家D】から株を購入し・・・

という感じです。

 

では、株式市場では株価の変動をどうにかして表現できないでしょうか?

例えば、日本市場の株価全体が落ち込んでいる時、日本を代表する企業である「トヨタ自動車」や「ソフトバンク」の株価も下落していることが多いです。

このような動きは日本市場と線形関係で表現出来そうです!

一方で、日本市場の動きに関係なく株価が上下することもあります。

これは、線形では無理そうです。。。

 

この様に、株価の動きは複雑ですが、株価の動き=リターンを数式化したものがCAPM理論です。

CAPM理論における株価のリターンの数式はこの様に表現されます。

 

 

 以下でこの数式を説明していきます。

マーケット依存リターン( β 部分)とリスクフリーリターン(Rf)

 左辺の Ri 求めたい企業の期待リターンです。

右辺の数式は2つの部分に分けることができます。

① β(RmーRf)

② Rf

① β(RmーRf)

β(RmーRf)は、マーケットに依存するリターン部分を表します。

マーケットリターンは Rm の部分です。

(RmーRf)はマーケットリスクプレミアムと呼ばれるもので、マーケットに参加したリスクに対するリターンを示します。

β は個別株のリターンの変動が、マーケットの変動にどれだけ依存しているかを示します。

例えば β =1ならば、マーケットと同様の動きをしますし、β=-1ならマーケットと正反対の動きをします。

( β の話は長くなるので、詳しくはβとWACCをご覧ください)

 

② Rf

Rf はマーケットリターンに全く関係なく発生する様なリターン部分を示しています。

つまり、いつでも発生するリターンのことです!

これは国債のリターンとすることが一般的です。

マーケットがクラッシュしても国債の価値は残ると考えられているからです。なので、国債の利回りの値を調べて使用しましょう。

 

以上の2つの数式から  Ri(求めたい企業の期待リターン)を求めることが出来ます。

 

このように簡単に期待リターンを算出できるのがCAPM理論の良い点です。

まとめ

CAPM理論は中学生でもわかるような数式で株価の期待リターンを表現できるため、理解しやすく、非常に使いやすいです。

市場リターン株価リターン国債利回りがわかるだけで、将来の期待リターンが算出できるのは夢のようです!

一方で、CAPM理論は良くも悪くも単純で、本当にこんなに単純なのかという気もします。

投資家やAIの様々な考えによって株価が形成されているとすると、その株価リターンを一次方程式で表現するのは確かに単純すぎる感があります。

最近は、CAPM理論に代わる『3ファクターモデル』等も提唱されており、CAPMが成立するか等はよく議論されています。

ですが、期待リターンが簡単にわかるというメリットは、デメリット以上の価値があるのではないでしょうか?

ぜひ、お気に入り企業の期待リターンを算出してみてください!

CAPM理論の例題&解答はこちらよりご覧ください

金融知識を学ぶ【企業力指数とは?フィルタとして使いやすい便利な指数】

金融知識を学ぶ【企業力指数とは?フィルタとして使いやすい便利な指数】

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企業力指数とは?

 「企業力指数」というのを聞いたことはあるでしょうか?

企業力指数=企業評価のための指数で、松本敏史教授が考案したものです。

松本教授は早稲田大学大学院会計研究科教授と京都大学経営管理大学院非常勤講師を兼任し、

財務会計論や企業価値評価等を教えているファイナンスのエキスパートです!

 

さて、企業力指数の算出方法ですが、以下の5つの指数の平均値=企業力指数となります。

 

  • 収益力指数  = 売上 ÷(売上−経常利益)
  • 支払能力指数 = 流動資産 ÷ 負債
  • 活力指数   = 売上 ÷ 資産
  • 持久力指数  = (資産−負債)÷ 負債
  • 成長力指数  = 資産 ÷(資産−当期純利益)
  • 企業力指数  = 上記5つの指数の平均

 

現在分析している企業と、比較したい企業があった際に、

双方が異なる業界に属していると元来の財務分析では比較しづらいということがありますが、

企業力指数を用いると、同じものさしで企業を測ることが可能になります。

もちろん、業界ごとに特色が出ますので、業界の平均値等を勘案して補正が必要ですが、

容易に様々な企業を比較できるのは画期的です!

企業力指数のメリット・デメリット

 簡単に比較ができる企業力指数ですが、そのメリットとデメリットを考えてみましょう。

メリット
  • わかりやすい

1.0を基準に数値が算出されるため、直感的でわかりやすいです。

 

  • 専門家でなくとも容易に計算が可能

計算式が簡単なので、財務諸表さえ読めれば誰にでも計算が可能です。

また計算式もわかりやすく、簡単に指標の数値が算出できます。

 

  • 異なる企業を同じものさしで測定できる

異なる業界の企業も比べられるので、企業比較の際に便利です。

 

△デメリット
  • 詳細な分析までは不可能

良くも悪くも簡易的な計算なので、財務諸表の一部分のみを反映しています。

なので、個別の詳細分析をする際には企業力指数は不向きだと言えます。

 

  • 業界毎に補正が必要な場合がある

業界によっては企業力指数の平均値が低い業界もあります。

したがって、業界毎に補正が必要な場合もあると考えられます。

 

  • 数値が簡易的なため、検証が必要

企業力指数自体が企業の本当の力を表さない場合もあります。

例えば、一般的に企業力指数が0.7を下回った状態が続くと倒産の可能性が高くなると言われていますが、

一方で1.0を上回っていても、企業の力が弱まっていることもあります。

 

※例えば、企業が営業に必要な資産を売却し、BSを圧縮しつつ負債を軽減している状態だと、

キャッシュを稼ぐ力は低下していますが、企業力指数は上昇することがあります。下記のような状態です。

 企業力指数のメリット・デメリットは以上になります。

簡易的に算定する場合には非常に有効ですが、企業力指数だけで判断することは危険かもしれません。

まとめ

今回は企業力指数の紹介やメリット・デメリットの考察でしたが、いかがでしたでしょうか?

企業力指数は、計算が簡単でわかりやすいという点で、初学者から使える非常に使いやすい指数です。

一方で、企業力指数単体で判断してしまうと、判断を誤ることもあるので注意が必要です。

企業力指数は企業選定の際のスクリーニングや、企業間をざっくりと比較したい際に向いている指標と言えそうです。

他の分析手法と組み合わせて使うことで、より意味のある分析が可能になるかと思います!

財務分析や定性分析に関してはこちらも参考にしてみてください。

>> 財務分析の方法 〜基礎編&実践編〜

>> 企業の定性分析 ~定性分析の手法:3つのフレームワークで分析してみる~

ファイナンス公式集

ファイナンス公式集

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記事で扱っているファイナンス関連の公式をまとめてみました。

備忘録にどうぞ。

目次

財務分析系

企業価値評価系

ポートフォリオ系

必要な数学的公式

ファイナンス例題集【DCF、株価、デュレーションなど】

ファイナンス例題集【DCF、株価、デュレーションなど】

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財務分析

財務分析に関する例題と解答をまとめています。

実際に株式投資する会社を財務分析すると結構面白い視点が見えたりします。

例題は証券アナリスト試験で出るような問題を意識して作成しています。

 

■問題.各社のROAを求め、売上高利益率と総資産回転率に分解せよ
財務諸表 J K
売上高 100億円 300億円
売上総利益 40億円 60億円
営業利益 20億円 30億円
総資産 250億円 600億円

解答

J社ROA:20 / 250 = 8.0%

J社売上高利益率:20 / 100 = 20%

J社総資産回転率:100 / 250 = 0.4回転

K社ROA:30 / 600 = 5.0%

K社売上高利益率:30 / 300 = 10%

K社総資産回転率:  300 / 600 = 0.5回転

■問題.各社の流動比率、自己資本比率、財務レバレッジを求めよ
財務諸表 S社 G社
流動資産 100億円 300億円
流動負債 100億円 200億円
自己資本 50億円 200億円
総資産 250億円 600億円

解答

S社流動比率:100 / 100 = 100%

S社自己資本比率:50 / 250 = 20%

S社財務レバレッジ:1 / 20% = 5倍

G社流動比率:300 / 200 = 150%

G社自己資本比率:200 / 600 = 33.3%

G社財務レバレッジ:  1 / 33.3% = 3倍

理論株価の算出

ファイナンス理論を用いれば、理論株価を算出することができます。

もちろん絶対にあっているわけではないですが、一種の指標として使うことができます。

■問題.X社に関して以下の問いに答えよ

(A)X社は株式β=1.1 Rf =2.0% Rm =6.0% である。同社の資本コストを求めよ

(B)X社は来季25円の配当を予定している。また2年後以降の配当金は毎期3%で成長すると期待されている。現時点でのX社の理論株価を求めよ

(C)X社の1年後の理論株価はいくらか

(D)X社のキャピタルゲインと配当利回りの合計は資本コストと一致しているか

 

解答

(A)資本コスト=β( Rm – Rf )+ Rf = 1.2 ( 6.0% – 2.0% )+ 2.0% = 6.8%

(B)理論株価=配当金/ (資本コスト–成長率) = 25/ (6.8% – 2.0%) = 520.833..円

(C)

1年後の配当金を用いて考える。

理論株価=25×(1.02)/ (6.8% – 2.0%) = 531.25円

(D)

キャピタルゲイン= (531.25 – 520.833..) / 520.833.. = 2.0%

配当利回り= 25/ 520.833.. = 4.8%

合計は資本コストと一致している

 

■問題.配当金が毎年40円という定額配当モデルを前提とする。

理論株価が2,000円であるとき、同社の資本コストを求めよ(無借金とする)

 

解答

理論株価と資本コストの関係は 理論株価=配当/資本コスト

従って、求める資本コストは 40円 / 2,000円 = 2.0%

 

 

■問題.P、Q社に関して以下の問いに答えよ
分析結果純資産/1株ROE配当性向資本コスト
P2,000円8.0%50%9.0%
Q1,000円10%40%7.0%

(A)P、Q社それぞれの理論株価、成長率、PER、PBRを算出せよ

(B) P社が配当性向を100%にすると、理論株価はいくらになるか

(C)Q社が配当性向を50%にすると、理論株価はいくらになるか

 

解答

(A)

配当金=純資産×ROE×配当性向

成長率=ROE×(1−配当性向)

理論株価=配当金/(資本コスト−成長率)

PER=1株当たり純利益/ 株価

PBR= 株価 /1株当たり純資産

算出結果配当金成長率理論株価PERPBR
P80円4.0%1,60010倍1.6
Q40円6.0%4,000円40倍4.0

 

(B)P社が配当性向を100%にすると、配当金と成長率に変化が起きる

算出結果配当金成長率理論株価
P160円0%1,777.78..円

 

(C) Q社が配当性向を50%にすると、配当金と成長率に変化が起きる

算出結果配当金成長率理論株価
Q50円5%2,500円

βとWACC

βやWACCは企業価値評価やリスクを考える上で大事な指標になります。

そもそもβとWACCって何?って方はこちらをどうぞ。

>>βとWACCってなに?どんな場合に使うの?

 

■問題.X、Y社に関して以下の問いに答えよ
財務諸表他XY
売上高4,000億円2,500億円
営業利益200億円200億円
当期純利益150億円150億円
有利子負債0円300億円
純資産2,000億円500億円
有利子負債利率0.0%2.0%
β(ベータ)0.81.2
配当金104円100円

※ Rf=2.0% Rm=6.0% 法人税率=30% とする

(A)X、Y社のROAを求めよ

(B) X、Y社のWACC、理論株価を算出せよ

 

解答

(A)

総資産=純資産+有利子負債

X社ROA:200 / 2,000 = 10.0%

Y社ROA:200 / (300 + 500) = 25.0%

(B)

資本コスト=β( 6.0%−2.0% )+ 2.0%

WACC公式:βとWACCってなに?どんな場合に使うの?を参照してください。

X社資本コスト:0.8 ( 6.0%−2.0% )+ 2.0% = 5.2%

X社WACC: 5.2%(無借金のため)

X社理論株価:104円 / 5.2% = 2,000円

Y社資本コスト:1.2 ( 6.0%−2.0% )+ 2.0% = 6.8%

Y社WACC: 6.8% ( 500 / 800 ) + 2.0% ( 300 / 800 )×(1−30%) = 4.775%

Y社理論株価:100円 / 4.775% = 2,094.24..円 

 

デュレーション

デュレーションは投資の回収期間を示す指標です。

修正デュレーションやらコンベクシティもデュレーションから求められるので、かなり幅のある指標と言えます。

デュレーションに関してはこちらをどうぞ。

>>デュレーションってなに?どんな意味があるの?

 

■問題.各債権のデュレーションを求めよ
CF/年数1年目2年目3年目4年目5年目
債権A1,000円1,000円1,000円1,000円11,000円
債権B500円500円10,500円
債権C0円0円0円10,000円

なお、各債権の価格は以下の通り。

債権A:13,205.795円

債権B:10,500円

債権C:8,227.02475円

 

解答

(債権A)

最終利回りt:

と表現できるので t = 3.0%

クーポンレート:10%

デュレーション:

 

(債権B)

最終利回りt: と表現できるので t = 5.0%

クーポンレート:5%

デュレーション:

 

(債権C)

最終利回りt:  と表現できるので t = 5.0%

クーポンレート:5%

デュレーション:クーポンレートは 0% なので デュレーション = 残存期間 = 4年

 

DCF法

企業価値評価をする際に用いる方法の1つがDCF法です。

そもそもDCF法ってどんな手法?という方はこちらをどうぞ。

>>企業分析に欠かせない! DCF法とは?

 

■問題.F社に関して以下の問いに答えよ
F1年後2年後3年後
FCF400億円380億円450億円

(A)4年目以降のFCFが毎期450億円で、一定だとするとF社の企業価値はいくらか。ただしWACCは8.0%とする

(B)4年目以降のFCFが毎期3%で成長する場合、F社の企業価値はいくらか。ただしWACCは8.0%とする

 

解答

(A)企業価値=将来CFの現在価値の合計

(B) 企業価値=将来CFの現在価値の合計

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回はファイナンスの例題&解説をまとめてみましたが、いざ書き出すと色々な指標があって、全部を最大限活用するのは難しいですよね。

1つの企業や1つの業種で絞って、色々な面から分析したら面白そうですね!

地道に探せばお宝銘柄も見つかるかもしれないので、みなさんもぜひ企業分析に活用してみてください。

 

デュレーションってなに?デュレーションの意味と計算式【投資用語解説】

デュレーションってなに?デュレーションの意味と計算式【投資用語解説】

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デュレーションとは?

 『デュレーション』という言葉をご存知でしょうか?

 主に債券投資で使われる指標で英語表記では『Duration』と綴ります。

 デュレーションとは、ザックリ言うと「投資の平均回収期間を示す指標」です。

 この指標が小さい程回収期間が短く、大きいほど回収期間が長いと考えて構いません。そしてこの指標は小さければ小さいほど良いです。

なぜデュレーションは重要なのか?

 投資において、回収期間は非常に重要な指標です。回収期間が短ければ短いほど、投資のデフォルトリスク(例えば投資先の会社が倒産して債券が回収できなくなるリスク)は小さくなります。

 早期に回収できれば再投資をすることも可能で、結果的に大きな収益も得られます。

 ではそれなら「投資が完了するまでの長さ」で見れば良いのでは?となると思います。

 しかし投資はそれほど単純ではありません。回収するタイミング金額の大きさも非常に重要なのです。

 そして、それらを考慮して『投資の回収期間』を評価できるのがこのデュレーションなのです。

 

 ちょっとややこしいですが具体的な例を挙げて説明します。

 例えば、残存期間5年の債券に投資する2つの場合を考えましょう。

  1. 価格100万円で購入し、5年後に120万円が返ってくる
  2. 価格100万円で購入し、1年後に100万円・2~5年後に毎年5万円が返ってくる。

 上記の2つの投資はどちらも投資の回収期間は5年で、回収金額も100万の投資に対して120万で同じです。

 しかし、それぞれ回収するタイミングが異なります。ではどちらの方が好ましい投資でしょうか?

 

 間違いなく2のパターンですよね。

 2の場合なら2年目以降に債券がデフォルト(回収不能になっても)しても初期の投資額を回収できるからです。

 また1年目後に100万円を回収できれば、その100万円を使って同じ債券に再投資をすることも可能です。

 

 この両者のデュレーションを計算すると以下の様になります。

 パターン1・・・ 5.0

 パターン2・・・ 1.3

 すると投資の完了するまでの期間だけでみるとどちらも5年で同じですが、デュレーションではパターン2<パターン1となり、パターン2の方が小さくなります。

 つまり、デュレーションで比較することで、早いタイミングで出来るだけ多くの額が回収出来るという事も考慮して比較をすることが可能になります。

 すなわち、デュレーションとは投資リスクや収益性を測る一種の指標と見ることが出来ます。

マコーレ・デュレーション

 一般的にデュレーションと言われるものがマコーレ・デュレーションです。

 計算式ではマコーレ・デュレーション = 投資に対する平均回収期間 と表されます。

*若干数学的な話に入るので数字が苦手な方は、この節は読み飛ばして頂いて構いません。

計算式:

*Dmac:マコーレ・デュレーション

CFt: t期キャッシュフロー・・・t期(t年後)にいくらお金がもらえるのか?

r : 割引率         ・・・この投資(債券)の利率(年間の金利)

 ここでCFtを1+rのt乗で割ったものは、t期キャッシュフローの現在価値となっています。

 つまり、マコーレ・デュレーションとはキャッシュフローの現在価値で期間を加重平均したものとなっているのです。

 ※現在価値に落とし込んだ時に、回収額が大きいキャッシュフローの年により重みづけがされるような計算となるということです。

  先ほどの例で説明すると、パターン1であれば1年後にキャッシュフロー集中しているのでより1に重みづけを、パターン2であれば5年後にキャッシュフローが集中しているので5に重みづけをした平均となります。

 ちなみに債券の価格は、その債権から得られるキャッシュフローの現在価値の合計と等しくなっています。つまり、先述の式の÷記号の右側の項はそのまま債券価格となっています。

 *P:債券価格

 *CFt: t期キャッシュフロー・・・t期(t年後)にいくらお金がもらえるのか?

 r : 割引率         ・・・この投資(債券)の利率(年間の金利)

修正デュレーション

 またデュレーションの指標としてはもう一つあります。それが修正デュレーションです。修正デュレーションは計算上では上記のマコーレ・デュレーションを1回割り引いたものとして表されます。

計算式:

 

 *CFt: t期キャッシュフロー・・・t期(t年後)にいくらお金がもらえるのか?

 r : 割引率         ・・・この投資の利率(年間の金利)

 なので修正デュレーションも基本的には投資の回収期間を示すものと考えて構いません。

 しかし、修正デュレーションにはもう一つ重要な意味があります。

それは利回り変化に対する投資価値(債券価格)の変動率です。

 債券は利回りが変わるとその価値も変わります。たとえば修正デュレーションが1の債券投資の場合、最終利回りが2%変化すると債券価格も2%変化するという事です。同じく修正デュレーションが2の債券投資の場合は、最終利回りが2%変化すると債券価格は4%変化するということになります。

 つまり修正デュレーションが大きいほど、金利変動の影響を受けやすいと取る事も出来ます。

 *ここから先も若干数学的な話に入るので数字が苦手な方は、この節は読み飛ばして頂いて構いません。

 なぜ?この修正デュレーションが利回り変化に対する債券価格の変動率になるのか?というと以下の様な関係式となっているからです。

債券価格Pとすると

債券価格Pの金利rに対する変動率は、Pをrで微分したものなので、修正デュレーションDと以下のような関係となります。

計算式:

 

*
P: 投資価値
r: 利回り(=投資家の期待する割引率)
Dmac: マコーレ・デュレーション
P: 債券価格
D: 修正デュレーション

 つまり「債券価格Pの金利rに対する変動=ー修正デュレーション×債券価格P」という関係性になっているのです。

 また符号はマイナスなので修正デュレーションが1ということは、金利が2%上がると債券価格は2%下がるという事になります。

まとめ

 デュレーションに関して記載してきましたが、いかがだったでしょうか?

 マコーレとか修正とか書いてきましたけど、少し専門的なので正直普段は使わないです。笑

 ですが、こんな投資の見方もあるという感じで理解頂ければ嬉しいです。

 

 数式自体は簡単なので、Excelでベースを作ってしまえば応用が利きます。

 債券を評価する一つの軸として、使用してみるのもいいかもしれないですね!

 例題も用意したので、興味がある方はこちらからどうぞ。

>> ファイナンス例題集【DCF、株価、デュレーションなど】

【誰でも使える!】財務分析の方法5選

【誰でも使える!】財務分析の方法5選

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企業は様々な方法で利益を作っており、業態は自動車製造からITシステムの導入支援まで様々です。
では、どちらの方が『優秀な企業』と言えるのでしょうか?

優劣を決めるためには分析が必要です。

今回は定量分析の一つである財務分析について紹介していきます。

目次

財務分析の準備:財務三表とは?

財務分析とは企業から開示されている情報、特に『財務三表』に基づき分析を行う方法です。

まず財務三表とは

  1. 損益計算書
  2. 貸借対照表
  3. キャッシュフロー計算書

の3つを指します。

損益計算書

企業の稼ぎ出す利益等が記載されている諸表です。
売上高や営業利益、当期純利益等が載っており、会計的にはフロー部にあたります。

感覚的には企業の1年間の成績表といった感じです。

貸借対照表

企業のもつ資産や負債が記されています。
売掛金や固定資産が資産部分に、長期借入金等が負債部分に記載されています。

よく聞く『自己資本比率』も貸借対照表で計算できます。
企業のこれまでの成績結果といった感じです。

キャッシュフロー計算書

企業のお金自体の流れが記載されています。
キャッシュフロー計算書は以下の3つのカテゴリに分かれます。
  • 営業活動によるCF
恒常的な営業活動による現金の流れが記載されています。
したがって、『営業活動によるCF』は売上の入金があれば増加しますし、買掛金を支払った場合には減少します。
もちろんプラスの方がいい指標です!

  • 投資活動によるCF
投資活動(設備投資やM&A他)に伴う現金の流れが記載されています。
例えば機械の購入を行った場合には、現金支出がありますので『投資活動によるCF』は減少します。
マイナスの企業は資本を投下して積極的に成長しようとしている企業と言えるでしょう。

  • 財務活動によるCF
財務的な経営判断に伴う現金の流れが記載されています。
例えば、借入れを行った際は、現金が増えますので『財務活動によるCF』が増加します。
プラスであれば借入れ等が増加しており、マイナスであれば減少しているという捉え方です。
成長しようと投資をしている企業は、大幅なプラスであることが多いです。

具体的な財務分析の方法

ここからはより具体的に使える財務分析のテクニックや指数を紹介していきます。
色々な指数を紹介しますが、ある指数が優秀だからといって安心してはいけません。

指数の意味を理解し、業界にマッチする指数を使うことで、より正確に同業他社と分析することが可能です。

企業力指数

下記5つの指数の平均が企業力指数となります。
簡単なスクリーニングにぴったりの指数だと言えます。
詳しくは企業力指数とは?をご覧ください。

収益性分析

企業の収益の効率性を判断する指標です。
大きく分けて3種類の収益性分析方法がよく使われています。

ROA(総資本利益率):営業利益 ÷ 総資産

総資産をどれだけ効率的に活用して利益を出せているかを示す指標です。

設備投資が多い重厚長大な産業は低めの数値で、IT等は高めの数値が出ます。
ITの方が効率的と言えそうですが、逆に言えば、重厚長大な業界は圧倒的な資本投下が必要なので、その業種であること自体が参入障壁となっていると言えます。

ROE(自己資本比率):営業利益 ÷ 自己資本

自己資本に対してどれだけ効率的に稼げたかを示します。

企業のIR資料等でもよく見られる言葉で、ROEが高い=より効率的に資産を活用していると言えます。
ちなみに、日本企業のROE(ROAもですが)は海外に比べ総じて低いと言われています。

営業利益率:営業利益 ÷ 売上高

営業利益率を同業種で比較すれば、どちらが無駄なく経営されているかがわかります。

経常利益を用いないのは、営業外収益が入ってしまうからですが、投資会社のようになっている企業もありますので、そういう企業は経常利益で算出する方が理論的です。

安全性分析

企業の存続の安全性を判断する指標です。
大きく分けて4種類の安全性分析方法がよく使われています。

流動比率:流動資産 ÷ 流動負債

短期的な支払能力を測定する指標で、一般的に120%程度が望ましいと言われています。

流動比率が高ければ、短期支払能力が高いと言えるのでキャッシュが底をつき破綻という可能性が減少すると考えられます。
これよりもさらに厳しい基準にする際には『当座比率』という指標を用います。

現預金月商比率:現預金 ÷( 売上 ÷ 12 )

短期的にキャッシュが十分かを判断する指標です。

例えば、災害等で売上が0の期間があっても、現預金月商比率が十分にあれば経費を払ってもキャシュが底をつき破産という心配も少なくなります。

固定比率:固定資産 ÷ 自己資本

数式通りで、固定資産への投下資金と自己資本の比率をみるためのものです。

どれだけの割合が返済義務のない自己資本でカバーされているかを測ることで、財務上の安定性を観るのに役立ちます
なので、100%以下であるのが望ましいとされています。

自己資本比率:自己資本 ÷ 総資産

一番有名な指標です。
一般的には30~40%くらいあれば十分と言われています。

自己資本比率は高ければ借入が少なく健全と言えますが、個人的には高すぎるのもどうかと思います。
高すぎる自己資本比率=成長する意欲があまりない?とも考えられるからです。
現状維持は衰退と同義だと思いますので、適度な自己資本比率が良いと思っています。

成長性分析

企業の存続の安全性を判断する指標です。
大きく分けて3種類の成長性分析方法がよく使われています。

固定資産回転率:売上高 ÷ 固定資産

売上をつくるのに何回固定資産を回したかを示す指標です。

したがって、数値が高ければ効率的に固定資産を使って経営しているということになります。
逆に、この数値が何年間も低いままであれば、過剰な設備投資を行っていると言えますので、決して良いお金の使い方をしているとは言えませんし、今後も同じ傾向である可能性を考えると、キャッシュ面でも不安が残ります。

在庫回転率:売上高 ÷ 棚卸資産

在庫をどの程度持たずに経営しているかを示す指標です。

したがって、在庫が少ない会社はこの数値が高くなりますので、在庫の側面からは効率的に経営していると言えます。
加えて、在庫を少なくすることでCFが増加しますので、財務安定性面からも良い評価ができます。

財務レバレッジ:1 ÷ 自己資本比率

どれだけリスクをとって成長しようとしているかを示しています。

高ければ成長意欲は高いと言えますが、安定性は落ちていきます。
個人的には、これも適度な水準が良いと思っています。

キャッシュフロー分析

企業が存続するためにはキャッシュを十分に稼いでいる必要があります。
ここでは3種類のキャッシュフロー分析手法を紹介します。

売上債権回転率:売上高 ÷ 売上債権​

債権回収の効率性をみる指標で、数値が低いほど債権回収に時間がかかることを示しています。

飲食店等のキャッシュ業界は数値が高い傾向にあります。
この比率が低いと資金が拘束されるので、CF的には良くないということになります。

仕入債務回転率:売上原価 ÷ 仕入債務

売上債権回収率と同様に、支払いの効率性をみる指標で、数値は低いほど支払いに時間がかかることを示しています。

この数値が大きく低下している時は要注意です。
この数値の低下には

  • 支払い条件を良くしてもらった
  • 支払いができないので延ばしてもらっている
という2つの可能性が考えられるからです。

もし支払いを先延ばしにしている状態であれば、キャッシュが逼迫していると言えますので、企業の財務安定性を確認する必要があります。

売上債権回転期間・買入債務回転期間

  • 売上債権回転期間:売上債権 ÷(売上高 ÷ 365日)
  • 買入債務回転期間:仕入債務 ÷(売上原価 ÷ 365日)
債権と債務の回転期間を比較することで、営業上CFが必要な経営態勢かどうかがわかります。

買入債務回転期間>売上債権回転期間ならば、買掛金の支払前に売上が入ってきますので、究極的には赤字でもCF的には安定していると言えます。

財務分析のまとめ

よく使われる代表的な財務分析の指標をまとめてみましたがいかがだったでしょうか?

このように様々な財務分析指標がありますが、例えば「流動比率なら120%」という基準があります。
しかしこれが絶対の基準というわけではありません。
業種によっても基準は違いますし、投資等の一時的なキャッシュアウトにより、キャッシュフローが悪化しているケースもあります。

なので、業界に合わせた基準や、企業の個別状況も加味する必要があります。
これが、財務分析指標は簡単だけど奥が深いと言われる理由です。

実際にやってみるのが一番なので、いろいろな企業を分析して、感覚を養ってみてください。

ビジネス自体を分析できる定性分析に関してはこちらもどうぞ。