アンケートを正確に分析するための流れ【7つの手法と3つの注意すべきポイント】
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アンケートは企業が商品やサービスに対する顧客の声を聞き、商品やサービスの現状を知ったり、改善する上で非常に有用です。
また、アンケートの内容を受けてマーケティング戦略をより効果的な方向に変更することもできます。
自社ツールでのアンケートの他、Google formや商品への口コミなどによる顧客の声は様々な企業が集めていますが、そのデータは「正確に」分析できていますでしょうか?
今回はアンケート分析を行う流れと手法7つと、その際に注意すべきポイント3つを紹介していきます。
目次
アンケート分析を行う上で注意すべきポイント3つ
- このアンケートは、誰を対象にとったアンケートなのか?
- 分析の目的は何か?
- 分析の目的は何か?
このアンケートは、誰を対象にとったアンケートなのか?
よくあるケースとして、自社サービスの会員に対するアンケートの結果を、マーケティング施策全体に適用してしまうという間違いがあります。
自社サービスの会員はある程度ロイヤリティの高く、比較的サービスに肯定的な集団だと思われますが、これからマーケティングで狙っていく属性の集団とは特性が大きく異なると考えられます。
飽くまで自社サービス会員のアンケート結果は、自社サービス会員を対象にしてのみ効果を発揮する可能性があるということを意識しなければなりません。
分析の目的は何か?
アンケートデータはデータ量も多く複雑な集計を行わなければならないことも多いため、データ分析に没頭し、そもそもの目的から逸れた分析を行なってしまうケースも散見されます。
常に目的に立ち返り、集計・分析を進めていきいましょう。
分析してわかったことはビジネス的に意味があるのか?
分析の目的は、マーケティングやその他施策にアンケートデータを活用することですが、分析してもビジネス的に意味がないことがあります。
「ビジネス的に意味がない」というのは、分析を行なってもビジネスインパクトが小さかったり、法律や社会通念上の理由で実現が難しい結論になってしまうということです。
例えば、「景気変動の影響で80%程度の売上変動が説明できる商品」の売上を回復させるために、残り20%の要因を分析するケースを考えてみます。
売上変動の20%の要因分析結果をマーケティング施策に落とし込めたとしても、ビジネスインパクトは最大で20%程度です。
しかし、そもそも分析精度自体が、20%収まっていれば十分なこともあるのではないでしょうか?
その場合、結局残りの20%の内訳が分かったとしても、景気変動の誤差でかき消されてしまう事も十分に考えられ、この分析で得られる示唆が何かしらあったとしても、ビジネス的には殆ど影響を与えないでしょう。
分析の最終目的は、どのようなビジネスインパクトを生み出せるかなので、ビジネス的に意味がある分析なのかどうかを常に考えながら、分析に取り組んでいきましょう。
アンケート分析の流れ
アンケート分析を行う際の流れは一般的に下記の通りです。
- データクレンジング
- アンケート集計
- 集計結果の分析
- 分析結果の解釈
クレンジングでデータを綺麗にし、集計、分析でとらえた事実を解釈するというのが一般的なアンケート分析の流れです。
それでは、それぞれの工程の詳細を紹介していきます。
データクレンジング
アンケート分析にかかる時間の半分以上はデータクレンジングの工程だといっても過言ではありません。
代表的なクレンジング処理の対象としては、株式会社AAAが「(株)AAA」「株)AAA」と様々な形で記載されてしまう「表記ゆれ」で、修正しない場合はそれぞれユニークなものとして集計されてしまい正確に集計ができません。
正しく「株式会社AAA」と表記を修正し統一することでデータの集計が容易になります。
データクレンジングの後には、表記の統一の他に「名寄せ」の工程を行なっていきます。
データクレンジングを通して、重複するデータを統合・整理することで、初めて意味のある集計を行うことが可能になります。
【クレンジングの注意点①】定期的にクレンジングを行うこと
定期的にデータクレンジング処理を行うことで、データの質を保ち正確な集計ができるような環境をキープできるように心がけましょう。
【クレンジングの注意点②】機械的なクレンジングのみでなく、目視でデータの正誤を確認する
また、たまにデータを目視で眺めると、今までになかった分析視点を閃くこともあります。
Excelの置換機能やクレンジングツールを過信しすぎずに、定期的に目視チェックを行うことで安定した質のデータベースを実現していきましょう。
アンケートの集計・集計結果の分析方法7選
単純集計
単純集計とは、アンケートの各質問項目ごとに集計を行う方法です。
カウントするだけなので集計ミスが起こりにくく、集計結果の解釈もシンプルでわかりやすいものになります。
一方で、シンプルがゆえに、その結果だけを見てマーケティング施策を行うのは危険です。
下記の例のような分析ミスはいくらでも起こり得ます。
- 商品Aの購入意向がある男性は全体の70%
- そこで男性に向けて、チラシを用いて購入促進施策を実施
- しかし、思った以上に商品Aの購入が伸びなかった
- 実は10〜20代の男性の95%が商品Aが好きで、30代以降は商品Aを好きな割合が30%しかなかった。
10〜20代はチラシをほとんど見ないため、施策効果がないのは当然で、10〜20代向けにSNSで商品Aの購入促進施策を実施すべきだった
単純集計は、集計、分析、結果の解釈が全て非常にシンプルで使いやすい集計方法ですが、単純集計の結果だけを見て判断せず、様々なデータを多面的に見て施策に落とし込んでいくことが重要です。
クロス集計
クロス集計とは、アンケートの各質問項目の掛け合わせによる集計を行う方法です。
性別や年齢層などの「属性」と他の質問項目を掛け合わせることで分析を行なっていく方法で、単純集計よりは集計が複雑になりますが、より詳細にデータを把握することが出来ます。
クロスする項目は2項目以上でも可能なので、「年齢」*「性別」*「〇〇な人」という3重クロス集計を行なっていくこともできます。
クロス集計の軸(掛け合わせ項目)を増やせば増やすほど、より詳細にデータを理解することが可能です。
一方で、集計軸を増やしすぎてしまうと集計結果が細かくなりすぎてしまい、解釈や実務や施策への落とし込みがしにくくなってしまいます。
最低でもサンプルサイズを30以上にすることを目安に、30に満たない場合は近い項目同士を結合させるなどデータを加工してから分析を行うことを意識しましょう。
また、集計は「絶対数」で集計するよりも「パーセンテージ(全体の割合)」で表記した方がいい場合が多いです。
なぜならば「絶対数」で集計してしまうと、回答者の母数の大きさに影響された分析を行なってしまうことになるからです。
サンプルサイズや表現方法(絶対数なのかパーセンテージなのか)などに注意してクロス集計を行なっていきましょう。
アソシエーション分析
アソシエーション分析とは「商品Aの購入者は、商品Bも購入していることが多い」など、無関係なように見えて実は何かしらの関係性があるものを見つけ出す際に使う手法です。
アソシエーション分析を行うことで、セット商品にすべき商品の組み合わせや、スーパーで隣に何の商品を置くべきか、などの非常に具体的なマーケティング施策を考えることができます。
また、自社商品だけでなく、他社商品との購入関係性を調べることも可能なので、
「商品Aの購入者は競合他社商品Z(特徴は〇〇)を購入している。自社で新しい商品Xに〇〇の特性を持たせればいいのではないか?」
など、マーケティングのみならず新商品開発への仮説を得る際にも活用することができます。
クラスター分析
クラスター分析とはアンケート回答者を特徴が似ている複数のクラスター(集団)に分けて分析を行う方法で、分けた集団の傾向や特徴を観察することで、より効果的なマーケティングを実現することができます。
クラスター分析には「階層クラスター分析」「非階層クラスター分析」の2種類がありますが、分析するデータ量が多い場合は、あらかじめクラスター数を指定する「非階層クラスター分析」にて行なっていきます。
クラスター分析を行うことで、特定の集団に対してより効果的な施策などを行うことが可能になるので
- 男性向けのみにDMを送付していたが、効果があまり良くなかった
- クラスター分析により、商品Aを買う保守的な20代男性は、特に購買余力があると推定されるので、商品Aを買った20代の男性を中心にDMを積極的に配布したら、以前より費用対効果が高くなった
のようにDMの費用対効果をあげる際などに用いられています。
主成分分析
回答者のアンケート結果をまとめ、より分析をわかりやすく・行いやすくする手法です。
膨大なデータがある場合は、アンケート結果の属性も多岐に渡ってしまうため分析が行いにくいという現象が発生します。
主成分分析を行うことで、アンケート結果の属性が似ているものを集約しデータを扱いやすくすることができます。
いわゆる次元圧縮を行うということです。
主成分分析はアンケートの項目が多い時などに有効な一方で、「主成分を抽出する=一部のデータは捨てる」ということを意味するので、主成分分析データだけを見ずに、全データも見つつ分析を行う必要があります。
出現頻度分析
回答者の回答中に出現する単語の出現頻度を分析することで、単語の重要性を分析する手法です。
「◯◯」(いい単語)「××」(悪い単語)「使いやすい」「高い」「△△」(商品の特徴)など、様々な単語をランキング形式で並べることができるので、回答者の商品への認識や思っていることを観察することが可能です。
分析する属性をあらかじめフィルター指定し、単語の重要性を分析することで、特定の属性の回答者がどのような単語をたくさん使っているかを知ることもできます。
センチメント分析
回答者が商品に対して持っている感情を3つの基準「肯定」「否定」「中立」で分析する方法で、回答者の感情を分析できます。
アンケート項目に自由記述項目があり、回答者が率直に感想などを書ける場合に有効です。
SNSの分析でもよく用いられる手法のひとつです。
分析結果の考察
ここまで、定性分析の方法を挙げてきましたが、技術力やブランド価値等の定性面の強みは定量的にな結果として出てきます。
例を挙げると、下記のようになります。
【結果】アンケートデータが伝える事実
分析者のバイアスがかかると事実が歪んでしまうので、事実を事実のまま記載していくことが重要です。
また、クロス集計などの手法を用いた場合には統計的に「検定」を行うことで、分析の確からしさを向上させることも可能です。
下記の例を考えてみましょう。
この場合、例①は
サイトのテーマカラー「赤」「黄色」は購入率に対して統計的に有意に影響があると言えるので、今後は「黄色」をテーマカラーにすべきと言えます。(※統計的には99%くらいの確率で、サイトカラーの変更による上昇だと言えます)
一方、例②では、「赤」「黄色」には統計的に有意に差があるとは言いきれず、たまたま購入者に偏りがあった可能性があるとも捉えられるので、テーマカラーを「黄色」にするべきかを判断できかねます。(※統計的には70%くらいの確率で、サイトカラーの変更による上昇だと言えますが、30%くらいの確率で違う要因だとも言えます)
このように統計的に「検定」を行うことで、分析結果が偶然なのか必然なのかを客観的に判断することができるので、意思決定者がより簡単に判断を下せるようになります。
【考察】結果を元に、実務上の意思決定を行えるように解釈したもの
様々なクロス集計結果をまとめて噛み砕くことも重要です。
例えば、下記のようなクロス集計結果がある場合の考察を考えてみます。
この場合の解釈としては
- Aという商品の認知率は20〜30代では平均で60%あるが、40代男性には50%、50代男性には30%しかない。
- 特に50代の認知率は他の世代に比べて有意に差があると言える(※実際に統計検定を行うには回答数が必要です)
- 40〜50代が普段見るメディアへの露出=広告が少ないのではないか?
- Aを認知している人の購入率は60代以上の年代以外はどの年代でも差がないため、認知さえ取れれば40〜50代のある程度の購入は見込まれる
といった感じです。
注意点として、結果を解釈し考察する際は、大前提として考えるべき「誰を対象にしたアンケートか」「意思決定に活かせるか」を意識して行いましょう。
アンケート分析とソーシャルリスニングとの違い
ソーシャルリスニングとアンケート分析との違いは
- 記載項目が決まっていないこと
- リアルタイムな集計ができること
- 回答が自由記述であること
つまり、ソーシャルリスニングには
- 率直な意見が聞ける
- アンケートに比べ簡単にデータが集められる
目的に合わせてアンケート分析とSNS分析を使い分けていきましょう。
まとめ
注意すべきポイント3つの
- このアンケートは誰を対象にとったアンケートなのか?
- そもそも分析の目的は何か?
- 分析してわかったことは意思決定に活かせるのか?
また、今回は分析手法を7つ紹介しましたが、データ量や分析の目的によって適切な手法を選んでいくことが重要なので、慎重に手法の取捨選択を行いましょう。
もし、アンケート分析でお困りの場合は、どんな質問でもお気軽にご相談ください。