アンケート設計の基本
アンケートは、正確なデータ収集と適切な意思決定を
今回は花王の分析をSWOTを中心に行っていきます。
SWOT分析の利用価値は現状分析とそこから考えられる戦略の策定です。
それによってより合理的で成功確率の高いジャッジを下すことが出来るようになるでしょう。
そして、逆に言えば”成功した企業”の戦略は、当時の業界構造分析を行うことで”なぜ成功したのか”を解明することが出来ます。
ここでは昔から続く日本の大手企業である花王の分析を行いますが、その経営の変遷は非常に学びの多いものです。(※私のMBA時代に分析したものを紹介しています)
SWOTの観点から、花王がどの様に考えて、どの様に意思決定を下したことで、成功できたのかを、具体的に解説していきます。
花王は東京都中央区日本橋茅場町に本社を置く国内大手化学メーカーであり、トイレタリー用品、化粧品、食品などを製造しています。
同社はトイレタリー業界では国内首位であり、化粧品でも国内で1、2を争う程のシェアを持つ日本のトップ企業です。
2016年現在、花王の事業内容は多角化しており、大きく分けて
の4つの事業があります。
花王の売上の40%を占める4つの事業の中で最も大きいのが「ビューティケア事業」です。
化粧品やスキンケア、ヘアケアなどの商品の事業で、代表的なブランドとしては、化粧品ではソフィーナ、カネボウ、モルトンブラウン、スキンケア製品としては、ビオレ、ニベア、キュレルなどが挙げられます。
ヘアケア製品では、ケープ、メリット、フローネ、アジエンス、エッセンシャルなどがあります。
「ヒューマンヘルスケア事業」は、健康機能飲料やサニタリー製品などを管轄しており、クリアクリーン、ヘルシア緑茶、パブ、メリーズパンツなどを扱っている事業です。
「ファブリック&ホームケア事業」では、衣料用洗剤や住居用洗剤などを扱っており、アタック、ハミング、ワイドハイター、バスマジック琳などのブランドがあります。
「ケミカル事業」は工業用化学製品なので一般の方にはあまり馴染みはありませんが、インクジェットプリンター用インクや、香料や油脂アルコールなどを手掛ける事業となっています。
ここで取り上げる化粧品事業は花王のビューティケア事業のうちの1事業です。
化粧品事業の売上は、ビューティケア事業の現在全体の約40%を占めています。(つまり全体の約16%です)
代表的なブランドが花王ソフィーナです。
これは1982年の販売開始から今なお残る自社育成ブランドです。
花王が化粧品事業に本格的に参入し、化粧品業界で存在感が出てきたのは1980年代で、この花王ソフィーナの販売開始が契機となっています。
2006年には当時花王に次ぐ国内シェアを誇っていたカネボウ株式会社の株式を取得し、同社及びそのグループ会社を子会社化しました。
これによって売上高ベースでは、国内化粧品市場は、実質的には資生堂と花王の2トップ状態になりました。
花王はこの状況下にて独自のブランド基礎化粧品「ソフィーナ」を開発し、化粧品事業へ本格的に参入し、成功を納めました。
この際、花王のとった戦略は差別化戦略です。
花王ソフィーナは、従来の化粧品の一般的な考え方であった「化粧品によって美しく変身する」ことではなく、肌にとって刺激になる物質を除いて、肌そのものの機能を高める化粧品を志向し、競合他社との差別化を図りました。
つまり花王はソフィーナを、従来の化粧品ブランドの主流であった”華やかさ”での勝負を避け、強みである技術を前面に出し、商品の機能を強調して基礎化粧品の分野に進出したのです。
例えば、テレビコマーシャルにおいては資生堂やカネボウは女優を使って華やかなイメージを顧客にアピールしていました。
一方、花王はあえて女優を使わず、卵の表面にファンデーションを付け、リキッドファンデーションとパウダーファンデーションを重ね塗りした方が、綺麗につくことを遡及するといったコマーシャルを放送しました。
これは逆に、華やかなブランドイメージを持たない花王だからこそ出来るものであり、既存の華やかなブランドイメージを持つ資生堂やカネボウなどの競合他社にはブランドイメージからも真似できない戦略でした。
そしてこの戦略が見事にハマり、花王は化粧品市場に大きく食い込む事が出来たのです。
また、花王は単に日用品メーカーとしての技術力があるだけではなく、化粧品事業の本格参入前から実は研究開発を積み重ねてきていました。
具体的には花王は1968年にバイヤスドルフ社(独)と提携して化粧品技術研究開始しており、その後1976年に皮膚研究室・医薬品研究室を開設、1978年には化粧品新基材の開発をしています。
これらの下準備があったからこそ、開発された「ソフィーナ」は従来の化粧品とは一線を画すものとなり、他社とは異なる差別化戦略が取れたと言えます。
そして、この技術の優位性を維持し、参画後も持続的に技術の優位性を保てる強さがあったことも成功の要因です。
花王は「ソフィーナ」を日用品メーカーとして培った技術力と結びつけ、さらに改良し続けることで優位に立つことが出来ました。
具体的には、花王の生物化学研究所は「セラミド」が皮膚の保湿に重要な役割を果たしていることを発見し、同社のスキンケア研究所は、この知見を元に、セラミドをスキンケア商品に配合した新商品を考案しました。
しかし、セラミドそのものの生産は技術的に確立されておらず、また天然のセラミドは存在量が少なく高価で、化粧品生産への安定供給は困難でした。
そこで素材開発研究所で、コンピュータ・ケミストリーによる分子設計技術を用いてセラミドと極めて性質の似た物質「スフィンゴリビットE」(SLE)の量産を実現しました。
これにより、花王は1987年にSLEを配合したクリームを「ソフィーナ」ブランドで新しく発売することができたのです。
このような研究開発の連鎖は、日用品メーカーとして培った研究開発力があってこそ実現できたものでした。
これは他の競合他社では再現することの難しい、まさに非常に大きな強みとなっていたと言えます。
(VRIOの点から見ても、「価値があり、希少で、模倣されにくく、組織として活用できる」経営資源であると言えます)
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